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【日本で麻農業をはじめよう 聞いておきたい大麻草の正しい知識】
麻商品の輸入の現状とポイント
- NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク 理事 赤星栄志
- 第11回 2013年10月21日
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麻の実にまつわる都市伝説の嘘
麻の実は、鳥のエサ、七味唐辛子の一味、機能性食品の麻の実ナッツとして日本国内で流通している。これらは外国為替および外国貿易法(外為法)輸入貿易管理令の輸入公表に定める通関時税関確認品目であるため、熱処理等によって発芽不能となったかどうかの証明書が輸入する際に必要となる。なお、この証明書は用途に関係なく、すべての麻の実に適用される。
しかし、麻農家がヨーロッパの優れた産業用品種を導入しようと輸入を試みた際にはこのルールに阻まれた。播種して栽培したいのに発芽不能にされて、全く意味がなくなってしまったのだ。
この熱処理証明書は、「当該陸揚港を管轄する地方厚生局麻薬取締部、地方厚生支局麻薬取締部又は地方麻薬取締支所が発行したものに限る」となっており、エサや食品なのに麻薬管轄の部署が窓口となる。発芽不能であるかどうかを確認するために発芽試験まで行なわれる。
ホームセンターやペットショップで販売している麻の実(図2)を大量に購入して、畑に撒けば何粒かは芽が出て収穫できる!という都市伝説を耳にしたことがあるだろうか。残念ながら、これは昔の話で、今では輸入した麻の実はすべて芽が出ないように熱処理がされている。
輸入差し止めになった大麻キャンディー
大麻の花穂のエキスをブレンドした大麻キャンディーは一時期、日本でも流通していたが、税関の検査でTHC成分が検出されたことと原材料に花穂を使っていたことから輸入差し止めとなった。そのときに厚生労働省から発行された事務連絡の内容を図3に示した。
他にもいくつかの通知が発行されているが、この「お約束」が輸入実務において最も分かりやすい。この事務連絡に従って、麻の原料や商品を輸入するときには、税関の事前教示によるHSコードを確認し、製造工程が分かる書類や成分表などを揃えておけば良い。
麻は嗜好品や医薬品に広く使われていた長い歴史があるため古くから貿易取引される商品だった。現在のHSコードにも、日本へは輸入できない大麻草そのもの、大麻草から得た大麻樹脂、大麻属の植物のエキスおよびチンキの3つのコードが品目として明記されている(表2)。麻薬に関する単一条約での規制があるにも関わらず、貿易品目にきちんと存在していることが面白い。麻と人類の歴史の深さを垣間見ることができる。
日本への輸入は、原則として違法であるが、大麻研究者免許を持つ者が厚生労働大臣の許可を受ければ、例外的に輸入可能となる。おそらく国際的な大麻事件があった場合、鑑定用に輸入するときに使われるものであろう。
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赤星栄志 アカホシヨシユキ
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
理事
1974(昭和49)年、滋賀県生まれ。日本大学農獣医学部卒。同大学院より博士(環境科学)取得。学生時代から環境・農業・NGOをキーワードに活動を始め、農業法人スタッフ、システムエンジニアを経て様々なバイオマス(生物資源)の研究開発事業に従事。現在、NPO法人ヘンプ製品普及協会理事、日本大学大学院総合科学研究所研究員など。主な著書に、『ヘンプ読本』(2006年 築地書館)、『大麻草解体新書』(2011年 明窓出版)など。 【WEBサイト:麻類作物研究センター】http://www.hemp-revo.net
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