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今年の市場相場を読む

キノコ類の季節戦略の功罪 エノキダケ/シメジ/マイタケ/エリンギ

キノコ類の入荷は、夏場に少なく、秋から冬にかけてピークを形成する。その一方で、入荷が少ないはずの夏に単価が安く、需要期になると入荷が増えても高単価が維持される。一般的にいわれる“セリの原則”に当てはまらない、独特の動きを示す。その原因は、ほとんどのキノコ類は周年供給を前提として工場生産されているため、JAやメーカーが季節価格戦略を採っているからだ。かつてのキノコ類の王者であったシイタケは、今や減少の一途をたどっており、成長しているエリンギやマイタケのまだ倍量以上の入荷はあるものの、エノキダケやシメジには大きく水を開けられている。


エノキダケ
冬は夏の2倍入荷で単価は2.6倍、JA系の販売戦略の成功事例とも

【概況】
 東京市場におけるエノキダケの入荷は、2003年対12年の10年間に28%も増え、同時期に25%も減らしたシイタケを抜き去り、今やその1・7倍もの数量を誇る、キノコの王様である。最も入荷が少ない7月と、最需要期である12~1月にかけての入荷量は約2倍に膨れ上がる一方、キロ単価は2・6倍にもなる。他のキノコ類の入荷と単価の関係も同様の傾向にあるが、エノキダケほど極端なケースはない。


【背景】
 マイタケやエリンギなどが農業外系のメーカーで生産・販売されているのに対して、エノキダケは農協系が中心である。主産地はシェア57%の長野、続く35%の新潟とで9割以上を占める。とりわけ、長野は主産地の中野市や全農長野の直販を含む販売戦略がエノキダケの成長に貢献している。生産者の直販に任せるのではなく、周年栽培農家と季節栽培農家のバランスを考慮し、系統が一元的に販売戦略を展開するという系統共販の近年の成功例だ。


【今後の対応】
 増えているエノキダケは全量国産なのに対して、減っているシイタケは中国産が1割強も入荷している。主産地が率先してマーケットニーズに対応しているか、産地がバラバラで戦略が定まらないかの差がモロに出ている。また、農業系であっても、農業外系のメーカー戦略に近い、相手先別、季節別の価格戦略が展開できるという好事例でもある。需要期に数量を絞って高値販売を狙うといった、生産起点の発想は時代遅れだということも証明した。



シメジ
10年で入荷量は4割も増加し、単価安でも規模拡大がカバー

【概況】
 東京市場のシメジは、03年対12年では入荷が4割も増え、エノキダケ同様、シイタケの入荷数量を4割以上も超えた。秋からの需要期には夏場の1・4倍も入荷が増えるが、単価は約2倍となる。ただし、冬場に夏の2倍に増えるエノキダケより季節間格差が小さいのは、シメジのほうが相対的に周年需要が定着してきているため。夏場に入荷量がエノキダケとあまり差がないのは一般料理にも多用されているからだ。


【背景】
 シメジはホクトが工場生産と直販戦略で拡大してきた側面だけが目立つが、じつは農業系での生産販売のウエイトも依然として高い。そのため、シメジはメーカー系が相場を作っている感があって農業系も相場の流れに沿う形になってはいるものの、一方で農業系は市場への委託販売品もある。メーカー系と農業系が切磋琢磨して需要に対応しながら、供給面での役割分担もあるのだ。契約部分とフレキシブル対応とがうまくコラボレーションしている。


【今後の対応】
 シメジは、メーカーと農協との過当競争が展開されているという見方もある。実際に過去10年でキロ単価は2割も安くなった。しかし、入荷量はこの間、4割も増えているのだ。主産地の長野と新潟のシェアは変化がないことを考えると、規模拡大で出荷量を増やしたことで単価は安くなったものの、スケールメリットでもうけは増大している。季節別のメリハリの利いた価格戦略と、総じて安くなった単価が購入を促進させたという相関である。

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