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新・農業経営者ルポ

俺は農業で人の心を満たすと決めた



農業が持つ福祉の力を経営に活かす

この取材の前日、のじまは近畿大学に招かれてアグリビジネスの講演する中で学生たちと対話した。いまの若者を否定するのかと思ったら、むしろ「感性がいいな」とほめる。それは学生たちが農業に福祉の力があることに気づいていたことにある。高齢者が農業に携われば、健康の維持やボケの防止になる。それは介護費や医療費の負担を減らすことにつながる。だから学生たちには「その考えは絶対正しい」と伝えた。
「定年を迎えたからって、年金をもらうのが当たり前と考えているのは間違いや。3歳には3歳の役目があり、80歳には80歳の役目がある。いくつになっても自分の役目っていうもんがあんねん。農業でお年寄りが生き生きとするなら、それは立派な福祉や。たくさんの金を使ってつくる今の福祉の仕組みより、よほどまともな福祉や」
結果的にのじまもそうした経営を築いてきた。彼が当初から思い描いてきたのは、必ずここにあって欲しいという農業。それからサラリーマンとして働きに来られる農業である。
杉・五兵衛では長く働く人が多い。たとえば、こんな話がある。つい最近まで従業員に最高齢で88歳の男性がいた。彼は当初、なんとバイクで通勤していた。それが85歳になって、家族から危ないと諭されてからは自転車に乗り換えた。でも、やっぱり体力的にきついからとバイクに戻したが、またもや家族の反対にあう。そこで電動自転車に乗り換え、長年勤め上げたというから驚く。ほかにも30年や40年務め続ける人がいる。
のじまいわく、給料は良くない、怒鳴り声はしょっちゅう飛ぶ、「バカヤロー」は日常茶飯事。鋭い眼が一挙手一投足をにらむ。それなのに従業員の表情は生き生きしているから面白い。客とともに従業員もまた心が満たされているに違いない。
経営の展開として次に考えているのは、まさしく農業が持つ福祉の可能性を追求すること。体験農園の会員に医者がいて、コミュニケーションや発育に障害を持つ人たちを農園に連れてきたところ、症状を和らげるのに効果があったという。福祉施設や企業のOB会と連携し、どうした仕組みができるのか模索しているところだ。
もう一つやりたいことがある。それは自分のように農村を経営できる人材の育成。すでに行政と組んで「都市農業枚方道場」をつくり、これから動き出していく。

風土を店内に飾り付ける

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