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それを問題視する理由は、何より今の水田技術そのままでできてしまう飼料稲の増産が水田農業のイノベーションを妨害することになっていることだ。畑作作業機で代かきから解放され、高速作業が可能になることで実現するコストダウンや規模拡大の妨げになっている。飼料稲が増えて早く水が来てしまい、乾田状態での播種ができないというボヤキを乾田直播に取り組んでいる人々からよく聞く。多くの読者もその交付金を受け取るべく飼料稲に取り組んでいるものの、その矛盾に気づいている人は少なくない。そんな人々が飼料稲をやめ始めていたのを、交付金で釣るようにして水田経営のイノベーションにブレーキをかけているのだ。
何度も指摘しているとおり、子実トウモロコシは飼料作の交付金3万5000円で十分に収益を出す可能性があり、その労働時間や投下コストの小ささから規模拡大も容易なのである。しかも、飼料としての価値もトウモロコシのほうがはるかに高い。現在の技術でできるというだけで選ばれている飼料稲は、誰のために必要な政策なのだろうか。筆者は、それは日本農業の安楽死を目指すものだと思う。
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昆吉則 コンキチノリ
『農業経営者』編集長
農業技術通信社 代表取締役社長
1949年神奈川県生まれ。1984年農業全般をテーマとする編集プロダクション「農業技術通信社」を創業。1993年『農業経営者』創刊。「農業は食べる人のためにある」という理念のもと、農産物のエンドユーザー=消費者のためになる農業技術・商品・経営の情報を発信している。2006年より内閣府規制改革会議農業専門委員。
江刺の稲
「江刺の稲」とは、用排水路に手刺しされ、そのまま育った稲。全く管理されていないこの稲が、手をかけて育てた畦の内側の稲より立派な成長を見せている。「江刺の稲」の存在は、我々に何を教えるのか。土と自然の不思議から農業と経営の可能性を考えたい。
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