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日本で麻農業をはじめよう 聞いておきたい大麻草の正しい知識

医療利用の可能性

本連載では、大麻草を研究テーマに掲げて博士号を取得した赤星栄志氏が、科学的な視点でこの植物の正しい知識を解説し、国内での栽培、関連産業の可能性を伝える。薬草療法として米国では州レベルで進んでいる麻の医療利用。カリフォルニア州などを中心に米国では10兆円産業に成長している。大麻排除を呼びかけてきた米国での取り組みを紹介する。


医療利用の可能性


今年8月11日に米国CNNチャンネルでサンジェイ・グプタ博士によるメディカル・マリファナのドキュメンタリー「WEED」が放映されて全米で大反響となった。1日に300回もてんかんの症状が出ていた幼児を救うために奔走した両親とそれに応えた大麻草(以下、麻)農家が取り上げられた。あらゆる治療法を試しても改善しなかったのが麻を摂取することで発症頻度が1週間に1度程度にまで劇的に軽減したのである。これは麻の医療利用をテーマにした全米初の大型番組となった。
米国カリフォルニア州でナンバーワンの農作物は、2011年時点で医療利用の麻である(図表1)。140億ドル(約1兆4000億円)という市場規模は、同州の農産物販売額で第2位の乳製品の2倍近くを稼いでいることになる。全米では10年時点ですでに10兆円産業とも言われており、世界で最も有望な薬草農業の地位を固めつつある。
麻には繊維や食用だけでなく、5000年以上前から痛み止めや食欲増進などの薬草として使われてきた長い歴史がある。例えば、世界最古の医学書の一つである神農本草経(しんのうほんぞうきょう)には、「麻賁(まふん):大麻草の雌花」として紹介され、無毒で長期服用可能な「上品」に位置付けられている。日本では、江戸時代の書物でその薬効が紹介され、明治時代には喘息や鎮痛の医薬品として印度大麻草(草、チンキ、エキス)が日本薬局方の第一局から第五局(1886年~1951年)まで65年間収載されていた。
しかし、麻の有効成分が水に溶けにくく、効果が不安定だったことや他の強力な薬剤の登場によって近代西洋医学から姿を消した。医薬研究までは禁止されていないものの、1961年に麻薬に関する単一条約が制定され、麻薬として国際的な管理下に置かれたため、多くの国で医薬研究を進めにくい状況になった。

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