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その後、70~80年代の欧米諸国でエイズ、緑内障、ガン疼痛などの自己治療のためにマリファナを喫煙していた方々が自らの体験を語り始めた。草の根的に治療効果が知られるようになると、法規制の矛盾を解消するために医療利用の合法化運動が始まったのである。様々な運動の展開を経て、ついに96年にカリフォルニア州で医療利用が合法化されると、次々と米国各州で合法化されていった(図表2)。今では全米50州のうち20州とワシントンDCで医療利用が合法化しており、過半数を超えるのは時間の問題である。オランダ、ベルギー、カナダ、イスライル、スペインやドイツなどでも一定の条件のもとで合法化している。
米国では、同じ国内でも州によって医療利用の細部が大きく異なる。住民投票で決めた州もあれば、州議会で決めた州もあり、適応疾患(医療利用できる病気)の数も異なる。所持量や患者が栽培できる本数もまちまちである。
患者に麻をどのように供給するかについては、ディスペンサリーと呼ばれる麻専門の薬局(配給所)からの購入と患者自らの自家栽培という2つの方法がある。ここ数年は「自家栽培はダメで、州政府が許可した農場で栽培して配給所から購入しなさい!」というルールに変わってきている。また、適応疾患リストは平均9つだったのがニューハンプシャー州で20に、イリノイ州で40に増えた。幅広い治療に役立つことが分かってきたのである。
そもそも米国は37年の大麻課税法施行によって産業利用、医療利用、嗜好利用のすべてを実質的に禁止し、ケシから採れるアヘンとともに大麻を排除することを全世界に普及してきた国である。そのため、今でも連邦政府は麻の産業、医療、嗜好のすべての利用を違法としており、麻を医薬品として認可はしていない。民間の薬草療法の一種として人道的な観点から州レベルで合法化している状況である。2012年12月からワシントン州とコロラド州がアルコールやタバコと同じようにマリファナの嗜好利用を合法したことで、麻を巡る法規制の議論はますます活発になっている。
統計情報がしっかりしているオレゴン州の例を見ると、13年10月時点で人口の1・5%に相当する約5万8000人の患者が麻の医療利用ライセンスを取得し、約1500人の医師が参加登録をしている。患者は医師の推薦状をもらうと、100ドルでライセンスを取得可能だが、1年ごとに更新手続きが必要となる。図表3のように、患者の使用用途の65%はガン疼痛や関節痛などの深刻な痛みである。特にモルヒネが体質や病状によって効かない患者にとってマリファナは痛み止めとして有効なのである。
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赤星栄志 アカホシヨシユキ
NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク
理事
1974(昭和49)年、滋賀県生まれ。日本大学農獣医学部卒。同大学院より博士(環境科学)取得。学生時代から環境・農業・NGOをキーワードに活動を始め、農業法人スタッフ、システムエンジニアを経て様々なバイオマス(生物資源)の研究開発事業に従事。現在、NPO法人ヘンプ製品普及協会理事、日本大学大学院総合科学研究所研究員など。主な著書に、『ヘンプ読本』(2006年 築地書館)、『大麻草解体新書』(2011年 明窓出版)など。 【WEBサイト:麻類作物研究センター】http://www.hemp-revo.net
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