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岡本信一の科学する農業

農産物の「非科学的」な誤解を解く

今回は農業や農産物に関連して半ば常識のように語られている誤解や間違いをいくつか挙げて、その間違いを正してみたい。ちまたでよく言われるのには「昔の野菜は栄養価が高く、現在の野菜は現在の野菜は栄養価が低くなっている」、「日本は雨による流亡が多いため、日本の土壌は微量要素が欠乏している」といったものがある。


野菜の栄養価は昔より低くなっているのか?


まず取り上げるのは、野菜の栄養価である。「昔の野菜のほうが現在の野菜より栄養価が低い」という根拠は、『食品標準成分表』という栄養士の方々が野菜をはじめとする食品の栄養価を計算するための基礎的な資料からきている。野菜を含む各食品についてビタミン類から微量要素を含む無機物、タンパク質、カロリーなどの栄養価を網羅しており、定期的に改訂されている。同じ野菜でも過去の版に載っている数値よりも最新版の栄養価、特にビタミン類などが低い。この事実を指摘しているのである。しかし、数値が低くなった原因について憶測で品種改良や化学肥料の多投によるとしているだけで、裏づけはない。
実際のところ、なぜ栄養価の数値は下がったのだろうか。確認しておきたいのは、最近はあらゆる野菜が周年で供給されていることである。ご存じのとおり、旬でない野菜は栄養価が低い傾向にある。これは作物生理上仕方のないことで、栄養価において旬のおいしい野菜にはかなわない。多くの農産物が旬でない時期にも生産できるようになり、その量は品目によるが、実に周年で供給されている量の3/4くらいを占めることもある。本来あまり栽培に適さない地域でも作られるようになり、栽培に適した産地でつくられた野菜より必然的に栄養価の低い野菜も出回ることになる。このあたりに昔の野菜よりも現在の野菜の栄養価が低いとされる原因があるのだ。

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