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岡本信一の科学する農業

農産物の「非科学的」な誤解を解く


いわゆる有機栽培や自然栽培と呼ばれる化学肥料や化学合成農薬を使わない栽培方法で作られた農産物の栄養価が高いか、おいしいかという問題である。必ずしも化学肥料や化学合成農薬を使わなければおいしく、栄養価が高い農産物を作れるのかというとそうとは言い切れない。
しかし、私の感覚とも合致するが、実際には有機・自然栽培の農産物のほうがおいしかったり、栄養価が高かったりという可能性はある。なぜなら、有機・自然栽培では先に書いた栄養価やおいしい農産物を作るための栽培条件に合致しやすく、簡単にいえば無理して作らず、適地適作に旬で作る場合が多いためである。
有機・自然栽培にはさらに非常に有利な点が一つある。前項で書いた根の張りである。根の張り、根毛の張りを良くするというのは実は簡単で基肥、特に窒素肥料を与えなければ良い。つまり、即効性の化学肥料を与えないために根毛の張りが良くなる環境を作りやすいのである。ただし、すべての有機農産物がこの条件を満たしているかというとそうではなく、有機農産物だから必ず美味しく栄養価が高いということにはならない。
微量要素にしろ、有機・自然栽培にしろ、作り手や土壌条件などの違いによる多様な農産物が供給されているために、一概には言えないというのが現状である。


人間は放射能とともに
生きている


最後に非常に書きにくい放射性物質の話題について言及したい。いまだに放射性物質については恐怖を覚える人も多いようで、福島産の野菜はまだ忌避されがちで、北関東の農産物でさえ同様の扱いを受けている場合もある。恐怖を煽るような記載をしているインターネット情報も多く、理性的に説明しても理解を得られにくいようだが、基本的な知識は知っておく必要があるだろう。
多くの農産物が放射性物質の検査を受けているなか、基準値を超える農産物はほとんどない。ということは、出回っていたとしてもごく僅かで、食べても問題ないというレベルである。詳細については多くの方が既に調べていらっしゃると思うので、放射性物質の根本的な危険性についてのみ述べてみたい。
原発事故が起こるはるか昔から、私たちは常に放射能とともに生きている。体内に含まれるものもあるし、外部から浴びるものもある。体内に含まれる物質のなかで最も多く内部被曝しているのはカリウムである。カリウムには必ずカリウム40という放射性物質が一定割合で存在し、日常的に体内で内部被曝しているのである。原発事故以降に設けられた放射性物質の基準値上限を食べ続けても、少ない量であればカリウム40の体内被曝量を超えない。

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