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“被曝農業時代”を生きぬく

自らの手で福島産の安全を伝える果樹農家たち(後編)

福島市の果樹経営者12人がつくるふくしま土壌クラブ(以下、クラブ)は、徹底して除染をしてきた結果、自分たちの果物が安全であると自信を持って訴えてきた。そうした努力が実り、売り上げは段々と原発事故前に回復しつつある。本来の農業経営を取り戻すため、これから何をすべきだと考えているのか。前号に引き続き、クラブ代表の高橋賢一と副代表の野崎隆宏に話を聞いた。 (取材・まとめ/窪田新之助)


福島産を応援する人々


クラブは、新聞やテレビのほか自分たちで作ったホームページで、県産の果物が安全であることを辛抱強く訴えている。その甲斐もあって、原発事故前と比べると2011年度に半分になったクラブ会員の平均売り上げは、12年度には7割まで戻った。今年度は8割まで戻る見込み。それには従来からの客だけでなく新しい客の支えがあった。高橋が胸を熱くしたような表情で語った。

「震災直後に会ったことのない東京のお菓子屋さんが、大丈夫なのかと、心配して電話をくれたんです。そして、ご夫婦そろって来てくれたんです。どうやら奥さんの親戚の実家が福島だそうで、とても悲しい、何とか力になりたいと、私の果樹園の果物を普段からつかってくれるようになりました。さらに3月11日になると1週間から10日間ほどのキャンペーンを組み、アップルパイを売ってくれるようになったんです。その売り上げは被災地への義捐金として寄付してくれる。また年1回ぐらいのペースで従業員を連れて、私の園地に来てくれるんです。今年は収穫の手伝いをしたいというので、朝5時とか6時から始まるから大変ですよって伝えたんです。それでも雨が降っている日に、わざわざ雨合羽と長靴を持ってきてくれて、手伝ってくれました。ありがたいことですよ」
野崎も同じような支援を受けてきた。

「うちにも、原発事故後に初めてお客さんになり、応援してくれる方々がいます。たとえば、以前からお歳暮でうちの果物をもらっていた会社の社長さん。震災後、その人から突然電話をもらったんです。こんな時だから応援するよ、って。それでドーンと何十箱も買ってくれた。新しいお客さんは減った数を補うほどではない。でも、美味しいから買うという人がいてくれることに、胸がジーンとなりますね」

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