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実践講座:したたかな農業を目指す経営管理 入るを計り出を制す!

経営の失敗は、自己責任かTPPが原因か?

時代変化の前に「なんとかなる」と腹を据えよう! TPPの交渉も中盤にさしかかり、政府も農業改革を進める大義名分の旗印のもと、コメの減反政策、補助助金制度の見直しを推し進めるようだ。好む好まざるに関係なく、メディアの発信する情報量の多さにいささか疲れた経営者、不安に駆られる経営者、なんとかなるさと思う経営者、本心はさまざまだろう。 学生時代に見た、ガットウルグアイラウンド交渉妥結の深夜ニュースを思い出す。日本農業は崩壊すると当時のメディアが取り上げた。我が家も順風満帆ではなかったが、その後もなんとか生き残り、明治38年に北海道に入植して以来、私で5代目である。昨年、普及指導員を辞めて、今年父から経営移譲を受け、農業経営者1年生となった。今の心境として、つぶしたときの言い訳は自分の腕前の悪さではなく、TPPのせいにしようと考えている(笑)。
冗談はさておき、「なんとかなるさ」と考える理由をもう2つ付け加える。まず日本は外交戦略が、実は得意だと思っているからである。歴史的に考えてみても、国力に恵まれない小さな島国が古くから官民問わず大陸に渡り、これと思う有益な情報は巧みに持ち帰って工夫して国益に活かしてきた。大国の侵略に苦しんだときも日本の交渉術でなんとか防いできた。資源が少ないながら交易を行ない、世界有数の経済大国にまでこぎ着けたのである。
農業に投入される資材・資源の多くも、戦後はその経済力と外交を武器に、平和的に海外から手に入れている。輸入品に依存する農業体質に功罪はあるものの、食糧増産を果たし飢えを回避した。変化による混乱と苦しさもあるだろうが、ガットウルグアイラウンド交渉のときと同様に、日本政府の外交と変化に対応する政策にすべてとは言わないが期待もしている。
もう一つは、農業者が一生懸命に働けばなんとか生活していくことができる国であると信じているからである。農業者は頑張り屋さんであり、器用である。苦しくなればいろいろな仕事に就いても、なんとか食べていこうとする。とある県の農家に結婚式で招かれた際、その友人の祖父が「戊辰戦争のときも家を焼かれずに済んだ。代々一生懸命働き、家を残すことに頑張った。おかげで300年続いている」と自慢していた。
農業者は先祖代々の土地に執着すると揶揄されることもある。これはなんとか生き抜こうとする力の原動力に他ならない。次世代に残さねばと思えば、なおその力は大きくなる。ときに兼業農家となっても、慣れた土地に住まい、食べ物を生産しているといったなんとも言えない安心感。自然と農業者や農村地域が培った力は私の本能的な「なんとかなる」という考えの源である。 
農業経営者それぞれに、腹の据え方は異なるだろう。大切なのは、経営者が時代の変化に必要以上の不安を抱かないことである。今後生き残るための算段をつけるとき、一番の障害となるのは言いしれぬ不安である。それぞれが「なんとかなる」と自信を持ち、日本の農業生産に大きな変革をもたらす時代に、したたかに生き残りたいものだ。

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