ナビゲーションを飛ばす



記事閲覧

  • このエントリーをはてなブックマークに追加はてな
  • mixiチェック

シリーズ水田農業イノベーション

特別編 水田での子実トウモロコシ生産の実際(後編)~国内生産と地域での耕畜連携の未来像~




国内の消費量と輸入動向
アジア諸国では増産の傾向


我が国のトウモロコシの消費量は年間に約1400~1600万tで、そのすべてが輸入されている。財務省の通関統計によるトウモロコシの輸入数量と単価は表3のとおりである。この価格は輸入商社が財務省に提出するCIF価格、つまり日本の港に着いた時点での価格である。実際には商社のマージンと各業者への物流費などが加わる。また、コースターチ用ではメーカーはでん粉の価格調整制度によりトン当たり数千円の金額を農畜産業振興機構に支払っている状況である。
先に述べた年間消費量のうち、飼料に使われるのは約1000万t。現在の減反水田や放棄された畑や草地など100万haでトウモロコシ(10a当たり収量が1tの場合)を生産した量に相当する。子実トウモロコシの国内生産面積がこの100万haを超えれば飼料の国内自給も夢物語ではなくなるのである。
これまで我が国ではまったく顧みられてこなかった穀物トウモロコシ生産であるが、他のアジア諸国はどうなのであろうか。表4はアジア諸国の12年のトウモロコシ生産量である。
日本と同じ稲作農業を主としてきた国々でもトウモロコシが大増産されている。これは経済成長による食の変化のためである。中国では00年の1億6000万tが12年には2億8000万t以上と桁違いの増産を進めており、インドネシアも967万tだったものが1937万tへと2倍以上に増産している。さらに、フィリピン、タイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、ラオスなど、稲作農業中心の東・東南アジア諸国でも増産が進んでおり、コメが年3回収穫できるような国でも稲を飼料にする政策などあり得ない。 
なお、表4では日本で170tのトウモロコシが生産されていることになっているが、それはFAOの推計であり、生産調査による数値ではない。現在、我が国での穀物トウモロコシ生産は、筆者が知る限り、13年の場合、北海道の長沼町、栗山町などで35ha程度、府県で秋田県と岩手県の二人の生産者による3ha弱であり、生産量としては300t程度である。


自家配合の畜産・酪農家が需要者
地域内自給が低コスト化のカギ


我が国での穀物トウモロコシ生産は始まったばかりだ。それも北海道長沼町の水田農家である柳原孝二氏とその価値を認める兵庫県の養鶏家である奥野克哉氏((株)オクノ)との間で始まった取り組みに端を発する。前提に北海道から兵庫県という遠距離の物流があり、物流コストを需要家としての畜産農家が負担している。この経費負担が大きければ取り組みは実現しない。

関連記事

powered by weblio