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たとえば、「A農場の新潟産コシヒカリ」とした場合、このA農場が判断の材料になる。この際の「A農場」は、企業ブランド(コーポレート・ブランド)という。内山農産は今後、「ヤマブン」が企業ブランドになる。さらに、「A農場の新潟産コシヒカリ BCD」というオリジナルの名前を付けた場合、「BCD」は商品ブランドとなる。
【ターゲットごとにブランドの価値は異なる】
強いブランドとは、それぞれの購入者のこだわりに最も近い形で応えるもので、期待を裏切らない、信頼が置ける企業や製品だといわれている。ブランドを信頼するのには、過去の知識や経験の積み重ねが大きく影響する。
高級車や高級時計などは、一生に一度か数回しか選ぶ必要がない。したがって、経験よりも知識が優先される。一方、農産物などの食品の場合は、食べるという過去の経験を積み重ねやすいのが特徴だ。ただ、食味という経験の他にも、こだわりの栽培方法についての知識、イベントに参加した楽しい記憶、マスメディアのお墨付きの情報などもかかわってくる。こうして培われたブランドへの信頼は何度も買ってくれるリピーターを育てる。
では、ここでいう購入者、つまりブランドのターゲットは誰だろうか。飲食店に卸している農業経営者も多いだろう。高級レストランと中食産業では欲しいものが異なるに違いない。高級レストランが最も望むものを提供すれば、高級レストラン業界に対して強いブランドとなる。中食産業が望むものを提供すれば、中食産業業界に対して強いブランドとなる。食味、品質、価格、安定供給体制、企業やその従業員たちの人柄など、求められることはさまざまだ。何を、どこで、どのようにその差別化の価値を認めてもらうかがブランドの力になるだろう。
一般消費者もターゲット層がさまざまである。安いがおいしいものが欲しい、ぜいたく気分を味わいたいので高くてもおいしいものが欲しい、家族が多いのでとにかく安いものが欲しい、栽培方法を説明しているものがいい、家まで届けてくれるものがいいなど、それぞれのターゲット層が期待するものを提供することがブランドの価値となる。
【認知されればブランド価値は上がるか?】
ブランドは、認知度が上がったほうがその価値は上がる場合も多いが、認知度が上がれば、必ずブランドの価値が上がるというわけではない。前述のとおり、ターゲットによってブランド価値は異なる。そのため、たとえば高級レストランに来店する消費者層だけが知っていれば良い場合もある。また、悪い評判で認知されれば、認知度が上がるほど、ブランド価値は下がる。信頼されるブランドづくりのほうがより大切だ。
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