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編集長インタビュー

全国のうまいものを集めて、東京から故郷おこしをしよう!

JR東京駅の隣にある神田駅の界隈は、平日の夜ともなれば右も左も赤ら顔のサラリーマンがうろつく。今回のインタビュー相手は、ここで料理屋「なみへい NAMIHEI」を構える川野真理子。他の店とはコンセプトが違う。「全国うまいもの交流サロン」という別名もあるように、同店は単に美味い物を求めに来る客向けではない。ましてや酔うためだけは論外。「東京から故郷おこし」という旗印のもとに集まる人々が、郷土料理を味わいながら故郷や地方に思いを馳せるサロンである。 (取材・まとめ/窪田新之助)
外観はオフィスビル。そこの1階にある表扉を開けて中に入ると、各地の特産品がズラリと並んだ棚やPR用のポスターが目に飛び込んできた。これだけでは東京にある都道府県事務所のようだ。ただ、さらに中に進むと、調理場があり、その前の広々とした空間にテーブルやソファーがいくつも置かれていた。ここでは自治体からの要望に応じて、各地の郷土料理を客にふるまったり、特産物を販売したりしている。自治体を特定しない、アンテナショップといえるかもしれない。

昆吉則(『農業経営者』編集長) 面白いお店ですね。川野さんはここで商売を始める前は何をされていたんですか?
川野真理子(なみへいオーナー) 1998年から10年間、経営者の交流やスキルアップを目的に、キープラネットっていうNPO法人 (起業家ネットワーク(の代表をやってたんです。それこそ10年間で500回ぐらいのイベントや勉強会、セミナーを開きました。
昆 それがどうして飲食店をやろうということになったんです?
川野 NPOを設立して7年目ぐらいした頃、私の故郷である青森の商工会女性部から講演会に呼ばれたんですね。そうしたら参加者の女性が嘆いている。「もう農業をやっていけないので、田畑を売って、千葉にいる長男のところに引っ越すつもり。でも婆さん一人がダダをこねて困らせるんだ」って。私、すごくびっくりしました。だって、住み慣れた青森を去って、住み慣れていない千葉にみんなして引っ越すなんて、一体どういうことなの。そこまで農業は駄目になっているわけ、って。その場で他の女性たちにも聞いてみたら、「食っていけないし、あとを継がせられない」って口をそろえる。いや、ほんとすごくびっくりして、スイッチが入っちゃったんですね。
昆 それでこの商売を?
川野 いえ、その前にまずは都内でレストランを借り切って、津軽の郷土料理を味わう食事会を開きました。当時、青森の外部技術評価委員を務めていた関係で、弘前の農業団体の女性代表と親しくしていたんですね。彼女たちと一緒に、青森出身の人たちに故郷を味わってもらおうという自腹企画をやったんです。というか赤字企画(笑)。故郷の現状を教えたり、幸せな気持ちを与えたりしたかった。でも、早朝から仕込み、夜もてなすというのは、想像以上に大変。1人当たりの単価を6000円とか7000円とかにしても、集客数は30人ほどだから赤字ですし。故郷おこしを中途半端にやってはいけないと痛感しました。これで一端は思いを引出に締まったんです。

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