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日本で麻農業をはじめよう 聞いておきたい大麻草の正しい知識

植物工場での医薬品原料の生産

本連載では、大麻草を研究テーマに掲げて博士号を取得した赤星栄志氏が、科学的な視点でこの植物の正しい知識を解説し、国内での栽培、関連産業の可能性を伝える。麻に含まれるカンナビノイドを用いた医薬品は2005年に誕生した。日本の大塚製薬とも共同開発を進めるイギリスの創薬ベンチャー企業は、原料となる麻を植物工場で栽培している。今回はカンナノイド医薬品にまつわる事例を紹介する。
大麻草(以下、麻)にはガンやエイズ、緑内障、喘息、てんかん、鬱病、慢性の痛み、多発性硬化症といった約250種類の疾患に治療効果があると報告されている。麻には、カンナビノイドと呼ばれる独特の化合物が100種類ほど含まれる。なかでも医薬分野で注目されているのはマリファナ効果のある「THC」と、繊維用の品種に多い「CBD」という成分である。麻の医薬研究は、人体にカンナビノイド受容体と脳内マリファナが発見されたことによって1980年代後半から世界規模の研究競争が繰り広げられている。

世界初のカンナビノイド医薬品

世界で初めて天然由来のカンナビノイド医薬品を発売したのは、GW製薬というイギリスの創薬ベンチャー企業である。同社は98年にイギリス医薬品庁から医薬品製造・大麻栽培免許を取得した。設立から7年後の05年にカナダで、ドイツのバイエル社と販売提携して神経性難病である多発性硬化症の痛み改善薬「サティベックス」を発売した。
この成功を支えたのは、世界のマリファナ文化のリーダー的存在で栽培や育種のノウハウを持つ、デビット・ワトソン氏とロバート・クラーク氏によって設立されたオルタファーマ(HortaPharm)社との業務提携である。アンダーグランドな種子入手を回避し、開発期間の短縮を実現した。さらに同社は米国のホワイトハウス麻薬撲滅対策室の元次官アンドレア・バーサウエル氏を雇用し、07年2月に日本の大塚製薬と米国での独占販売ライセンス契約を締結して多発性硬化症とガン疼痛の鎮痛剤としての臨床試験を含む共同研究を進めている。
GW製薬は150名規模の企業で、11年度の売上高約37.7億円のうち「サティベックス」の売上が約5.7億円を占め、前年度に比べて59%増と伸びている。売上高の多くは提携企業から支払われる研究開発であり、大塚製薬がその約4割(14億円)を負担している。
サティベックスは舌下型スプレーの形をしており、1本5.5ml入りで1回に100マイクロリットルを正確に噴射できるようになっている(図1)。噴射1回分にはTHCが2.7mg、CBDが2.5mg含まれている。摂取目安は1度に4~8回の噴射で、THC量は10.8mg~21.6mg。これは、THC10%品種のマリファナ煙草1本(900mg)をすべて摂取した量とほぼ同じである。気になる値段は1本125ドル。症状によって摂取量が違うが、月に4~8万円かかるらしい。マリファナ煙草の4~5万円に比べてやや高いかもしれない。

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