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そう思うようになったのは、30年ほど前、専業農家の親戚が毎日のように自宅に届けてくれた不格好な野菜にある。店で買うトマトやキュウリとは違い、曲がっていたり、妙な凹凸があったり、色つやが良くなかったりする。その点を冗談めかして親戚に指摘すると、次のように返された。
「市場に出すのと、自家消費では農法がまったく違う。曲がったり虫がついたりしてるんは、農薬や化学肥料を使ってないからや」
この言葉で食への関心が一気に高まった。子どもを産むであろう娘たちに有機農産物を食べさせてあげたいと思うようになっていた。とはいえ、何も自分で農業を始める必要はなかったのではないか。有機農産物の販売店は少なくないのだから。そのことを問うと、ある体験談を語ってくれた。
当時、清水は知人の新聞記者とともに、都内の百貨店にJAS規格の有機農産物を卸す農家の畑に突撃で押しかけたことがある。訪問の意図を伝えた途端、農家の態度がこわばった。ちょうど噴霧器で殺虫剤をまいていたからだ。害虫が多発したので、最小限の殺虫剤をまいていると弁解されたが、「これがJAS有機の実態なのか」とあぜんとした。そのときの驚きはそのまま、自分が責任を持って有機農産物を作らなければいけないという覚悟につながった。
そのために60歳を過ぎてから農地の取得に動き出す。ただ案の定、農地法の厚い壁が立ちはだかる。とりわけトラック駐車場の開発会社を経営していたことで、農業委員会からは、転用を期待しているとの疑いをかけられた。その辺りの苦闘は清水の著書『一緒に闘って下さい「悪法」に挑む』(出版元:ルネッサンス・アイ)に詳しいので、そちらに譲りたい。一点、農地の取得絡みで清水プランだけはぜひ紹介したい。
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個人で農地を取得後、別の農地の購入を持ちかけられた。ただ農業委員会からは、すでに取得した農地の耕作が半分ほどしか済んでいないので、これ以上に面積を広げることはできないと指摘された。打開策として取った道は、法人化して人を雇用することである。2009年4月1日に今の会社を設立した。
法人として新たな営農計画書を提出するにあたり、困ったのは利益を生む根拠を示すこと。農業委員会は初年度から黒字化を求める。ただ、農業は始めたばかり。ましてや慣行栽培より収量が低くなりがちな有機農産物で、すぐに経営を黒字にする目算はなかった。
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清水三雄 シミズミツオ
(株)京都天田郡みわ・ダッシュ村
村長
1941年、京都府京都市生まれ。立命館中学校3年で記憶術に出会う。これを基にした連想術でさまざまな事業を起こす。役職はみわ・ダッシュ村代表のほか、日本最大のトラック駐車場の開発会社・⑭JPD清水社長、⑭日本マネジメント開発研究所会長、NPO法人京都SEINEN団理事など多数。フランス発祥のスポーツ・ペタンクでは第2回ペタンクジャパンオープンで優勝。後に国際大会にもたびたび出場する。珠算やゴルフなど特技も多い。
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