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新・農業経営者ルポ

1株100万円!過疎地を変える新たな農村ビジネス


ただ、そこで諦めることはなかった。内にこもるのではなく、外に向けて開かれた発想をする。思い浮かんだのは「一口農場主」という制度。耕作放棄地を開墾して、野菜や果物を作りながら、過疎地をにぎやかにする。そうした理念に共感してくれる人や企業を株主として募集することにしたのだ。
といっても株価は数千円とか数万円ではない。1株当たりなんと100万円。個人の場合は1株100万円だけのモニター農場主と、3株300万円の個人農場主を用意。法人の場合は9株900万円以上の取得を義務付けている。株主には最低5年間、ダッシュ村で収穫した無農薬・無化学肥料のコメや野菜、果物を毎月届ける。利回りにすれば約7%相当分。サービスの内容は取得株式数に応じて変えている(表参照)。
最初にこの株価を聞いたときには正直驚いた。でも、譲渡できる上限249(2億4900万円)の88(8800万円)をすでに売却したそうだ。
1株100万円に設定した理由について問うと、「区切りが良い。それにこのぐらいの金額でないと、農場主に農作物を毎月送れないから」。農産物を宅配する月日をさらに開けてしまえば、農場主とダッシュ村との距離感がそれだけ遠くなってしまうというわけだ。
それにしても100万円である。それにすべてが未上場株なので、株式市場で値上がりするのを待ち、売ることはできない。もし売りたくなれば、個人的に欲しい人や企業を探すしかない。だから、株で利潤を追求することはできない。
私が疑問を抱いたように、清水も株を購入する理由を気にしているようだ。申込があるたびに、農場主になる人たちに聞いているという。そうすると、大抵の人たちはダッシュ村の事業理念への共感を挙げる。それは次の3つである。
●耕作放棄地を優良農地に変える
●完全無農薬・無化学肥料の有機栽培をする
●過疎地・限界集落の活性化
取材前に想像していたのと違い、聞いてみれば、株の購入者で清水と個人的な付き合いがあったのは1人だけ。残りはすべて見知らぬ人たちだった。純粋に事業理念に賛同しているのだ。それに申込者の所在地の内訳をみると半数以上が関東圏。続いて中京圏、近畿圏の順番。つまり、福知山市三和町に地縁も血縁もない人々が農場主になっているのだ。
こんな農場主がいる。京都の特別養護老人ホームの園長は、非常時でも入居者の食べ物を確保できる体制を整えておくことが目的だ。また、ある会社の社長は、社員教育の一環で彼らに作物が育つ過程を見せる場として利用したいそうだ。

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