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特集

障害者や高齢者らとつくる農業経営


鈴木は障害者を「先生」という。
「ネギの定植なんて、障害者を雇わなかったら、いまだに昔の方法でやっているはずでしょ。いわば彼ら彼女らが農業を変えたんです」

【専門家による雇用基準を設ける】

とはいえ誰でも雇うわけではない。雇用するに当たって次の3つの条件を設けている。
(1)障害者本人が働く意欲がある
(2)自力で通勤できる
(3)他の従業員ともめごとを起こさない
この3つはあくまでも最低条件。そもそも障害者が応募してきても、いきなり面接に応じることはない。まずは障害者の就労を支援する公的機関をたずねてもらう。そこで専門家による職業適性の診断を経て、必要に応じて1カ月から1年に及ぶ訓練を受けてもらった後、一定の条件をクリアすれば採用する。こうした段取りにしているのは苦い経験があるからだ。
京丸園で障害者を雇用している噂が広まるにつれ、そうした子どもたちの親から自分たちの息子や娘を雇って欲しいと望む声が増えてきた。ただ実際に会ってみると、中には一見して働くことが難しい人たちがいる。それで断ると、「差別だ」と親に憤慨されてしまう。それを福祉業界にいる知人に相談したら、「お前が悪い」と思いがけない意見が返ってきた。知人によれば、鈴木が決めた採用基準だから納得してもらえないというのだ。そこで雇用するに当たっては専門家にラインを設けてもらい、それに基づいて彼らの診断をあおぐことにした。
そうして雇った人たちはすべて京丸園の心耕部に入る。同部には、障害者が長期的に働くことを助ける「第2号職場適応援助者」の有資格者3人が社員として所属する。その3人が障害者から働き方について相談を受け、それぞれの就労プログラムを管理している。そのプログラムに沿って、同社の農作業部隊である水耕部と土耕部の仕事に出向く。

【賃金は能力制】

同社の給料は能力制。その人の能力が最低賃金に満たないと判断した場合には、法律に基づいて労働局にその減額措置の許可を申し出る。現在のところ1人当たりの平均時給は584円。最も低いケースで390円。ちなみに静岡県の最低賃金は749円(2013年10月改定)。
能力制にしたのには理由がある。雇い始めた当初、精神障害者が多かった。鈴木によれば、彼らは思慮深い分、自分が最低賃金に見合った仕事ができているかで悩んでしまう。悩み過ぎると辞めてしまう。そうした事態は防ぎたい。もう一つは、能力制であれば会社の業績が上下しても障害者を雇い続けられるためだ。

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