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特集

障害者や高齢者らとつくる農業経営


「会社は業績が悪化すると、まずは障害者をリストラする。そうなると、彼らは次の職場を見つけるのは大変なんですね。だから障害者が望むのは、給料よりも安定して長く働ける職場。能力制にすることで、互いに無理のない関係が築けると私は考えます」

【医療との連携へ】

鈴木がこれから取り組もうとしている一つに医療機関との連携がある。事例を挙げよう。
以前、知的障害の女性にハウス内の掃除を頼んだところ、過度なほど丁寧に掃除してくれたので雑草がなくなった。それで害虫も農薬の使用回数も減った。掃除をすると害虫の侵入を防げることを知った鈴木は、育苗ベンチをまたぐ格好の運搬車に吸引式の捕虫器を取り付けた「虫トレーラー」を開発。手で押して移動していくと、苗にひそむ害虫を次々に吸い取ってネットに閉じ込める。これで農薬を一切使わずに済むようになった。
この装置を病院と連携して、足腰を痛めた患者の仕事として使ってもらう計画を進めている。患者は装置を押すことで賃金をもらい、リハビリもできる。それにリハビリ患者が押すスピードは、害虫を確実に吸引するには適している。他にもリハビリを兼ねて使う機械を開発中。福祉に加えて医療との関係という新しい風が、京丸園の経営をまた新たにしていくことになりそうだ。

Profile
鈴木(すずき) 厚志(あつし)
1964年、静岡県浜松市生まれ。2004年に屋号を取って京丸園(株)を設立、代表取締役に就く。2006年、農業と福祉の連携を目指すNPO法人しずおかユニバーサル園芸ネットワークを設立。静岡県農業法人協会副会長。全国優良認定農業者表彰農水省経営局長賞、第33回日本農業賞特別賞、障害者関係功労者内閣総理大臣表彰、農林水産省農林水産技術会議会長賞など受賞。


CASE3
企業OBたちと築く都市近郊農業

12月の平日。埼玉県さいたま市の住宅地に囲まれた畑では、20人ほどが鎌を手にして黙々とコマツナを収穫していた。よく見ると、髪に白いものが混じった男性ばかりだ。
農場主である(有)若谷農園(さいたま市)の代表・若谷茂夫(62)は、社員4人のほか、35人ものアルバイトを雇っている。特徴的なのはアルバイトのうち60歳以上が23人と6割以上を占めること。このうち女性はわずか3人に過ぎない。企業を退職した男性が多く働く職場だ。
もともとこれほどの人数を雇っていたわけではなかった。現在の経営面積はコマツナが露地で5haとビニールハウスで80aのほか、地域の特産であるクワイが60a。父親の代までは家族経営で、アルバイトで数人を入れながらコマツナはビニールハウスで作っている分だけだった。

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