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【小川幸夫の虫の世界から見る農業】
天敵昆虫を生かす術を考える
- 小川幸夫
- 第2回 2014年01月28日
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そんな筆者が後にムシキングとなるきっかけになったのは就農を間近に控えた時期に捕まえたテントウムシの幼虫たちをおいて他にない。近所のトマト農家のハウスにアブラムシが大量に発生しているというので、得意げになってテントウムシの幼虫を100匹ほど捕まえて持っていった。子どものころからいろんな虫を捕まえては飼っていたため、テントウムシがアブラムシを食べることは知っていた。だが、数日後に確認しにいくと、アブラムシが大量にいるにもかかわらず、テントウムシの幼虫たちはアブラムシを食べるどころか、なんとお互いを共食いしていたのである。
テントウムシはアブラムシを食べるのではなかったのか。調べると、アブラムシもテントウムシも個々に数百種類が存在することに気づく。そのとき、ようやくわかった。それぞれがすみ分けできているということを。
昆虫たちは実はかなりの偏食なのである。テントウムシならアブラムシをなんでも食べるわけではない。一つの種類のテントウムシは好みの植物を食べる好みのアブラムシしか食べないことをそのときに気づかされ、そして驚き、また感動した。それから虫たちの複雑な食物連鎖の仕組みにとても興味を持ち、なんとか自身の農業に利用できないものかと考えるようになった。
害虫と一緒に殺されている
本稿では農家の立場で害虫と益虫の話題に絞る。筆者は研究者でもないため、普段から接している畑の害虫と益虫のみしか触れられない。そのうち、畑では特に見向きもされず、害虫とともに殺されてしまう益虫の重要性を中心に伝えられればと思っている。
そもそも益虫とは人間にとって都合のいい昆虫のことを指す。これは、人間が益虫だと解釈すればそうなってしまう勝手な区分けだが、わかりやすいのが主に農業で生物農薬として売買されているような害虫を食べる肉食昆虫や肉食のダニである。我々農家は、これら益虫の生態を理解して上手に使うことで、化学農薬のコスト削減やその散布の手間暇、被ばくリスクを軽減できる可能性を持っている。
さて、個別に昆虫を取り上げていきたいところだが、生物農薬である天敵昆虫を用いることが害虫防除のうえでどんな位置にあって、またどんな方法があるのかをまず先に見たい。IPM(Integrated Pest Management)という用語から入る。「総合的な病害虫防除」と訳されるIPMは、病害虫防除のためのバランスの良い考え方で、防除の4つの方法の分類とその組み合わせからなる。
(1)
耕種的防除(適地適作、適期適作、適正施肥、輪作、フリー苗、接ぎ木、品種改良など)
(2)
生物的防除(天敵昆虫、フェロモン剤、コンパニオンプラント、完熟堆肥、ぼかし、微生物資材など)
(3)
物理的防除(防虫ネット、シルバーマルチ、捕虫紙、光による誘殺など)
(4)
化学的防除(化学農薬など)
病害虫防除の方法はこのようにたくさんあるものの、どうしても(4)の化学農薬に偏りがちなのが現実である。天敵昆虫に関しては、(2)の生物的防除のなかの一つになるわけだが、考えてみればIPMのなかの生物的防除、さらにそのなかの天敵資材ということで、本当に数多くある方法の一つに過ぎない。天敵昆虫とはそうした立ち位置にある。
テントウムシはアブラムシを食べるのではなかったのか。調べると、アブラムシもテントウムシも個々に数百種類が存在することに気づく。そのとき、ようやくわかった。それぞれがすみ分けできているということを。
昆虫たちは実はかなりの偏食なのである。テントウムシならアブラムシをなんでも食べるわけではない。一つの種類のテントウムシは好みの植物を食べる好みのアブラムシしか食べないことをそのときに気づかされ、そして驚き、また感動した。それから虫たちの複雑な食物連鎖の仕組みにとても興味を持ち、なんとか自身の農業に利用できないものかと考えるようになった。
害虫と一緒に殺されている
益虫に目を向ける
本稿では農家の立場で害虫と益虫の話題に絞る。筆者は研究者でもないため、普段から接している畑の害虫と益虫のみしか触れられない。そのうち、畑では特に見向きもされず、害虫とともに殺されてしまう益虫の重要性を中心に伝えられればと思っている。
そもそも益虫とは人間にとって都合のいい昆虫のことを指す。これは、人間が益虫だと解釈すればそうなってしまう勝手な区分けだが、わかりやすいのが主に農業で生物農薬として売買されているような害虫を食べる肉食昆虫や肉食のダニである。我々農家は、これら益虫の生態を理解して上手に使うことで、化学農薬のコスト削減やその散布の手間暇、被ばくリスクを軽減できる可能性を持っている。
さて、個別に昆虫を取り上げていきたいところだが、生物農薬である天敵昆虫を用いることが害虫防除のうえでどんな位置にあって、またどんな方法があるのかをまず先に見たい。IPM(Integrated Pest Management)という用語から入る。「総合的な病害虫防除」と訳されるIPMは、病害虫防除のためのバランスの良い考え方で、防除の4つの方法の分類とその組み合わせからなる。
(1)
耕種的防除(適地適作、適期適作、適正施肥、輪作、フリー苗、接ぎ木、品種改良など)
(2)
生物的防除(天敵昆虫、フェロモン剤、コンパニオンプラント、完熟堆肥、ぼかし、微生物資材など)
(3)
物理的防除(防虫ネット、シルバーマルチ、捕虫紙、光による誘殺など)
(4)
化学的防除(化学農薬など)
病害虫防除の方法はこのようにたくさんあるものの、どうしても(4)の化学農薬に偏りがちなのが現実である。天敵昆虫に関しては、(2)の生物的防除のなかの一つになるわけだが、考えてみればIPMのなかの生物的防除、さらにそのなかの天敵資材ということで、本当に数多くある方法の一つに過ぎない。天敵昆虫とはそうした立ち位置にある。
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小川幸夫 オガワユキオ
大学卒業後に農業機械メーカーへ入るも、自身が思う理想の農業を目指すため、2001年に千葉県柏市の実家の農業を継ぐ。畑は1町5反、うち4反がビニールハウスで年間100品目の野菜を生産している。 20年前まで地元の市場に個選でネギを出荷していたが、ネギの価格が低迷したことを受けて自宅裏に直売所を設け、色々な野菜を作って地元の消費者に販売するようになる。現在は地元の百貨店や高級スーパーにコーナーを構えてもらっての販売のほか、大型直売所や年間200回以上の朝市での販売、また地元レストランをはじめとしたくさんの飲食店に野菜を供給している。
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