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「基本に忠実に管理するということでしょうね。コチョウランについては何も知らないなかで始めたけれど、基本こそが一番大切だと思いました」
91年、松浦は栽培品目を観葉植物からコチョウランに転換した。以来、視察や研修のため、全国で100戸近くの生産者のもとを訪れたという。時には1、2週間、ビジネスホテルや旅館に滞在。そこから農園に通い、一緒に作業をさせてもらいながら、見よう見まねでコチョウランの作り方を学んできた。
そのなかで関東と東海の両地方では栽培の仕方とマーケットに大きな違いがあることがわかった。関東流は「水をあまりかけずに根がしっかりと張るのを待つ、1鉢1鉢を大切にする作り方」。一方、東海流は「自動かん水である程度水をかけながら、大量生産する作り方」。いずれの良し悪しがあるわけではない。ただ、松浦園芸はコチョウランでは後発組だったので、地元の他の生産者と同じ育て方では勝負にならない。関東流を採用して、「1鉢1鉢を大切にする作り方」を目指すことにした。だから今も1鉢1鉢にホースで水をかけ、培地にまんべんなく水を行き渡らせている。
花姿へのこだわり
そうした丁寧できめ細やかな姿勢は花姿にも現れる。正面から鉢に咲いた花を見た際、その後ろの茎が見えてしまえば商品価値を落とす。これを防ぐため、花の後ろにスポンジ状のウレタンをあてて洗濯バサミで留め、茎を隠すために花の向きを矯正する。もちろんすべて手作業。年間25万本を生産するので相当な手間を要するが、店頭価格で2~3万円の値を付ける国内最高級品に仕上げるのに手を抜くことはない。国内最大級の生産量ながら高品質。これこそ松浦の言う「絶対差」である。
鉢にもこだわりがある。3本立てを正面から見た際、真ん中より両サイドが10cm低くなる構造になっている。この鉢は中国広州交易会で知り合った現地のメーカーに製造を依頼し、3週間に一度、名古屋港を通じて輸入する。日本国内のメーカーに頼めば仕入れ単価は1.5倍になるからだ。松浦は言う。
「付加価値を打ち出しながらいかにコストを抑えるかが大切。そのためにはある程度量を使えないと、鉢屋さんに注文できないでしょ。3週間に1回取り寄せるなら、向こうも頑張りますよ」
茎を固定する支柱にしても台湾のメーカーから仕入れている。日本国内のメーカーから購入していたときには支払金額が毎月平均で100万円に及んだ。その経費を減らすため、台湾の工場に出向いて直接取引を始めた。これで4割カットになった。
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松浦進 マツウラススム
(株)松浦園芸
代表
愛知県豊橋市生まれ。67年、豊橋市弥生町で観葉植物の生産を開始。80年にオランダから日本初の自動鉢植え機を導入し、年間30万鉢の出荷体制を整備。91年、東七根町でコチョウラン専用の温室を建設して観葉植物から転換。11年に農林水産業者・団体の最高の栄誉である「天皇杯」を受賞。
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