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【吉村明のみつひかり栽培日誌】
「みつひかり物語」(2)
- 三井化学アグロ(株) 営業本部マーケティング部ハイブリッドライス 種子グループ グループリーダー 吉村明
- 第2回 2014年02月20日
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「みつひかり」は、現在、日本で唯一普及しているハイブリッドライスです。毎年、雄の品種と雌の品種を交配して採種しています。一般品種の固定種と違い、雄と雌の開花時期がそろって雄の花粉を雌が受け取って初めて、種子ができます(図1)。その生産効率は約80kg/10a。「みつひかり」のお米が平均700kg/10a以上とれることを考えると、驚くほど少ない生産量です。
種子の価格が一般品種に比べて7~8倍近くするのは、種子の生産性が低いことが原因で、これはハイブリッドライスの宿命です。現在は、茨城、愛知、福岡の3県の農家と種子生産契約を結び、当社との共同作業で種子を生産しています。高くて種子が汚いといわれることが多いですが、種子生産の難しさをご理解いただき、「コメ1俵分が種子代」とと考えて栽培していただければと思います。
2013年産の栽培面積は、全国で約1500ha(全国の水稲栽培面積の約0.1%程度)でしたが、産地品種銘柄に指定されている県は18県あり、「にこまる」「夢ごこち」と並んで指定銘柄247品種のなかで7番目の多さです。コシヒカリの43県にははるかに及びませんが、「みつひかり」の適応性の広さと全国の大規模生産者に選ばれている結果だと思います(図2)。
当社のハイブリッドライス開発は1985年に始まりました。当時はバイオブームで、大手総合化学メーカーはどこも、日本最大の作物である稲の育種に取り掛かりました。当社は、種子を毎年入手しなければ栽培できないハイブリッドライスの開発に着手しました。
中国の種苗会社と提携して育種素材を導入し、80年代後半には実栽培で収量1t/10aを超える品種を育成し、種子の生産体制も整備しました。収穫したお米は社内販売や羽田空港のカレーショップにで使用されるなど、事業は順調にスタートしたかと思われました。ところが、この時期に開発した品種は、多収でも食味が伴わず、「こんなお米、誰が食べるの?」といわれる不味さでした。
90年代に入り、食味の優れた日本品種を母親にした研究を開始し、「みつひかり2003」と「みつひかり2005」を育成しました。課題だった食味や品質が大きく改善し、「多収穫でおいしい品種」で、「生産すれば種子はいくらでも売れる」との考えで事業を展開してきました。
「みつひかり」の普及状況
2013年産の栽培面積は、全国で約1500ha(全国の水稲栽培面積の約0.1%程度)でしたが、産地品種銘柄に指定されている県は18県あり、「にこまる」「夢ごこち」と並んで指定銘柄247品種のなかで7番目の多さです。コシヒカリの43県にははるかに及びませんが、「みつひかり」の適応性の広さと全国の大規模生産者に選ばれている結果だと思います(図2)。
開発の経緯
当社のハイブリッドライス開発は1985年に始まりました。当時はバイオブームで、大手総合化学メーカーはどこも、日本最大の作物である稲の育種に取り掛かりました。当社は、種子を毎年入手しなければ栽培できないハイブリッドライスの開発に着手しました。
中国の種苗会社と提携して育種素材を導入し、80年代後半には実栽培で収量1t/10aを超える品種を育成し、種子の生産体制も整備しました。収穫したお米は社内販売や羽田空港のカレーショップにで使用されるなど、事業は順調にスタートしたかと思われました。ところが、この時期に開発した品種は、多収でも食味が伴わず、「こんなお米、誰が食べるの?」といわれる不味さでした。
90年代に入り、食味の優れた日本品種を母親にした研究を開始し、「みつひかり2003」と「みつひかり2005」を育成しました。課題だった食味や品質が大きく改善し、「多収穫でおいしい品種」で、「生産すれば種子はいくらでも売れる」との考えで事業を展開してきました。
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吉村明 ヨシムラアキラ
三井化学アグロ(株)
営業本部マーケティング部ハイブリッドライス 種子グループ グループリーダー
1962年生まれ。1988年 北海道大学大学院農学研究科修了。同年 三井東圧化学(株)(現三井化学)入社、農業資材開発に従事(北海道工業所勤務)。1996年 本社異動後、ハイブリッドライス事業開発を担当になる。2000年に事業ごと三井東圧農薬⑭(現三井化学アグロ)に異動し、現在に至る。17年間「みつひかり」をライフワークに、全国を飛び回る。
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