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【岡本信一の科学する農業】
大規模化はするべきですか?
- (有)アグゼス 代表取締役社長 岡本信一
- 第28回 2014年02月20日
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話を単純化するために、面積拡大による収益モデルをシミュレーションしてみよう(表1)。面積10の圃場で100%出荷した場合の売上を10とする。栽培に必要な経費率をそのうちの50%とすると経費は5。現実的な出荷歩留りを90%とすると、実質的な売上は9。売上9から経費5を差し引いた4が利益となる。
面積拡大の効果として、面積当たりの経費削減が考えられるだろう。そこで、面積が倍に拡がると5%経費割合が下がると仮定する。表の成功事例のように、歩留りは90%を維持できれば、面積が20に倍増すると売上は18に増え、経費割合が5%下がり、利益は8・5、つまり利益率は2・1倍になる。大規模化することで効率化し、経費割合が下がるという想定では、さらに320まで面積を拡げると、売上は32倍、利益は41倍となり、経費割合は50%から38・7%に抑えられる。
これが大規模化の効率化によるメリットだと一般的に考えられている。ところが、私の見る限りこのようなケースは稀だ。大規模化による経営効率の改善は簡単にできるものではない。例えば、家族経営で2人が働いている農場で、面積を倍にする時にもう一人増やせば効率化ができるという考え方がある。しかし、機械投資や販売のための作業時間が増大するなど思い通りに効率化できず、経費は減らせないこともある。
経費の割合が下がらなければどうなるのかというと、面積が増える分だけ売上も利益も増える。大幅な利益増はなくても、これでも大規模化のメリットはあると考えられる。
成功の決め手は大規模でも
今度はよくある大規模化の失敗事例をシミュレートしてみよう。大規模化のメリットが十分に得られていない農場の多くは、圃場が荒れてきて出荷歩留りが落ちている。要するに面積が小さかった当時には丁寧につくっていたのが、目先の大規模化を追うことで面積拡大につれ圃場の作物の品質や出来が悪くなってしまったのである。
表1の下の事例では、面積を増やしても面積当たりの経費割合が50%のままで、圃場の出荷歩留りが面積を倍にすると10%低下することを想定した。極端かもしれないが、私の見た範囲ではこのような例も少なくない。
売上は面積の増大とともにある程度は伸びるが、歩留りの低下により利益は増えない。面積が32倍に増えても、売上が伸びないので経費割合は増加し、利益は15・7倍となる。売上の伸びに対する利益は微々たるもので、出荷歩留まりの低下具合によっては赤字に陥るだろう。
実際の圃場データを見ても、圃場の出荷歩留まりは差が大きく、特に天候条件の悪い時ほど差が出やすい。天候の悪い時ほど、お客様が最も欲しがる時である。このタイミングで安定的な歩留りを維持し、市場に出荷できれば莫大な利益を得ることができる。良好な天候の時には、歩留まりに大きな差は出ないので、見逃しがちになるが、出荷歩留まりが悪い農場では天候の影響をモロに受け経営が悪化する。しばしば取り上げられる大規模化した経営体でも実際には儲かっていない場合は、要するに出来が悪くなったために儲けにつながっていないのである。
面積拡大の効果として、面積当たりの経費削減が考えられるだろう。そこで、面積が倍に拡がると5%経費割合が下がると仮定する。表の成功事例のように、歩留りは90%を維持できれば、面積が20に倍増すると売上は18に増え、経費割合が5%下がり、利益は8・5、つまり利益率は2・1倍になる。大規模化することで効率化し、経費割合が下がるという想定では、さらに320まで面積を拡げると、売上は32倍、利益は41倍となり、経費割合は50%から38・7%に抑えられる。
これが大規模化の効率化によるメリットだと一般的に考えられている。ところが、私の見る限りこのようなケースは稀だ。大規模化による経営効率の改善は簡単にできるものではない。例えば、家族経営で2人が働いている農場で、面積を倍にする時にもう一人増やせば効率化ができるという考え方がある。しかし、機械投資や販売のための作業時間が増大するなど思い通りに効率化できず、経費は減らせないこともある。
経費の割合が下がらなければどうなるのかというと、面積が増える分だけ売上も利益も増える。大幅な利益増はなくても、これでも大規模化のメリットはあると考えられる。
成功の決め手は大規模でも
歩留りを維持できるか
今度はよくある大規模化の失敗事例をシミュレートしてみよう。大規模化のメリットが十分に得られていない農場の多くは、圃場が荒れてきて出荷歩留りが落ちている。要するに面積が小さかった当時には丁寧につくっていたのが、目先の大規模化を追うことで面積拡大につれ圃場の作物の品質や出来が悪くなってしまったのである。
表1の下の事例では、面積を増やしても面積当たりの経費割合が50%のままで、圃場の出荷歩留りが面積を倍にすると10%低下することを想定した。極端かもしれないが、私の見た範囲ではこのような例も少なくない。
売上は面積の増大とともにある程度は伸びるが、歩留りの低下により利益は増えない。面積が32倍に増えても、売上が伸びないので経費割合は増加し、利益は15・7倍となる。売上の伸びに対する利益は微々たるもので、出荷歩留まりの低下具合によっては赤字に陥るだろう。
実際の圃場データを見ても、圃場の出荷歩留まりは差が大きく、特に天候条件の悪い時ほど差が出やすい。天候の悪い時ほど、お客様が最も欲しがる時である。このタイミングで安定的な歩留りを維持し、市場に出荷できれば莫大な利益を得ることができる。良好な天候の時には、歩留まりに大きな差は出ないので、見逃しがちになるが、出荷歩留まりが悪い農場では天候の影響をモロに受け経営が悪化する。しばしば取り上げられる大規模化した経営体でも実際には儲かっていない場合は、要するに出来が悪くなったために儲けにつながっていないのである。
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岡本信一 オカモトシンイチ
(有)アグゼス
代表取締役社長
1961年生まれ。日本大学文理学部心理学科卒業後、埼玉県、 北海道の農家にて農業研修。派米農業研修生として2年間アメ リカにて農業研修。種苗メーカー勤務後、1995年 農業コンサ ルタントとして独立。 1998年(有)アグセス設立代表取締役。農業 法人、農業関連メーカー、農産物流通企業、商社などの農業生 産のコンサルタントを国内外で行っている。講習会、研修会、現地 生産指導などは多数。無駄を省いたコスト削減を行ないつつ、効率の良い農業生産を目指している。 Blog:「あなたも農業コンサルタントになれる」 http://ameblo.jp/nougyoukonnsaru/
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