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土門「辛」聞

TPA法案をめぐり混沌としてきたTPP交渉 オバマ大統領訪日前に合意説、決裂して長期化の見方も

昨年7月にスタートしたTPP交渉が、いよいよ大きな山場を迎える。2月22日から4日間、シンガポールでの閣僚会合で、「合意」か「先送り」かの結論が出される。本誌が届く頃には、結果は判明しているはずである。2月12日という執筆時点なら、予想ということでしか原稿をまとめることはできない。これまでの報道を参考にすれば、筆者の予想は、「先送り」だ。そうなれば交渉が長期化することも想定される。カギを握るのは、前月号でも触れた「大統領貿易促進権限(TPA)」法案。まずはおさらいから始めてみたい。
そのTPA法案。日本農業新聞の解説が簡潔にして要を得るので、今回はこれを紹介する。
「TPAは、米議会が持つ貿易交渉の権限を期限付きで政府に一任し、交渉しやすくするための仕組み。しかし、2007年7月に失効したままだ。TPAの失効中も米政府は交渉に臨めるが、米議会での審議・採決の際に合意内容の修正を求められる可能性が高くなる」
次いで前回シンガポールでの閣僚会合後の交渉の進捗状況についても頭に入れておきたい。2月5日付け毎日新聞の記事が、これまた要を得ている。
「最難関分野の一つが日米間の関税交渉。何とか打開しようと、フロマン氏は1月20日、甘利明TPP担当相と電話で協議し、同25日にはスイス・ダボスで茂木敏充経済産業相、林芳正農相と会談。3閣僚の会談後、大江博首席交渉官代理が急きょ渡米し、米国側と事務レベルの協議をした。ただ、コメなど重要農産品の関税維持を求める日本と、関税の全廃を迫る米国の姿勢は変わらず、『交渉』」のレベルにさえ至らなかった」

EUの市場統合が類例か!?

12カ国が参加するTPP交渉は、日本と米国のように世界経済をリードする経済大国もあれば、つい最近まで社会主義国だったベトナムや、イスラム教のマレーシアの開発途上国もある。それだけではない。単なる産油国で工業などないに等しいブルネイ、通商国家が売りのシンガポール、南米国のチリやペルーのような開発途上国、オーストラリアやニュージーランドのような強い競争力を持つ農業国、すでに米国と自由貿易協定(NAFTA)を締結したカナダやメキシコ。とにかく種々雑多な国々が参加した通商交渉だ。
過去に類例のないという点では、交渉の目指す方向が、「包括的で高い水準の協定を達成していく」(昨年2月の日米共同声明)と、経済統合とまではいかないまでも、それに近づける通商交渉である。これに類例を見出すとしたら、自由化度という点ではEUの市場統合になろうか。それを実現するため、戦後まもなく欧州石炭鉄鋼共同体を発足させ、これを踏み台にして約半世紀かけて実現したのである。
TPP交渉が、EUの市場統合を模範にしたものかどうかは知るよしもないが、とにかく「包括的で高い水準の協定」を目指すという割には、参加12カ国間の種々雑多性はとても気にかかるところである。
TPA法案は1月9日、超党派の議員によって議会に提出された。提案者の1人、民主党のマックス・ボーカス上院財政委員長が「TPAは、TPP交渉を締結するのに役立ち、米国の牧場主、農民、企業や労働者に具体的な利益をもたらす」とのコメントを発表すれば、同じ民主党のハリー・リード院内総務は反対の立場で、与党民主党の中でも意見は分かれている。1月31日付け朝日新聞は、「迅速な交渉ではなく、慎重な交渉が望ましい」と反対の理由を指摘している。

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