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【新・農業経営者ルポ】
水生植物で築いた現代の「癒しビジネス」
- (株)杜若園芸 代表取締役 岩見悦明
- 第117回 2014年03月19日
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現代における「癒しビジネス」
突然だが、メダカがひそかなブームなのを知っているだろうか。辺りに自然環境が見当たらない都会暮らしの寂しさやむなしさを紛らわすため、飼う人が増えているのだとか。といっても、どれだけ売れているのかはいろいろ調べてもよくわからなかった。ただ、杜若園芸でメダカシリーズがヒットを飛ばしていることからすれば、根強い支持層があることはうかがえる。水生植物のことを理解してもらうためにも、まずは同社のメダカシリーズを紹介したい。
「メダカにやさしい土が入った水草」は初夏から秋に黄色い花を咲かせるスイレン科コウホネ。ポットのままメダカを飼育する水槽に沈めておくと、培地の「やさしい土」が水質を弱酸性に保つ。この土は多孔質で通水性にも優れるため、水草にとっても快適な環境を生み出す。
今年の新商品「メダカが喜ぶ弁当」は、弁当箱の格好をしたパッケージで興味をひく。中に詰まっているのは餌に加えて水質浄化用の小粒の石、さらにはメダカが産卵場所にするためのトチカガミ科アマゾンフロッグピットやサンショウモ科オオサンショウモといった浮草。初心者でもこれ一つあれば小さな水鉢で飼育を始められる。
ほかには広葉が水面を覆って水温の上昇を防ぐことで猛暑でもメダカが快適に過ごせるセット、メダカとともにキキョウ科のアゼムシロやリンドウ科アサザなど昔ながらの日本の水草を眺めるセットもある。メダカ愛好家のためにそろえた商品は実に30種類を超える。
もちろん、メダカシリーズだけではない。たとえば、屋内外で生物の生息環境を提供するビオトープのセット。大きな枠を取った水槽の中で複数の水生植物にメダカや金魚を育てていると、いろんな虫がやってくる。草花の移ろいに感じ入るのはもちろんだが、生き物たちが暮らす小さな空間を観察することは家族間の会話や子どもたちの学習の場を生み出す。あるいはポットに植えたマコモダケやクワイであれば、その生育を観賞した後に食べられる。このように、水生植物は心身ともにたくさんの楽しみ方や味わい方がある。
「うちは癒しビジネス。心のない時代と言われる今だからこそ、段々需要が増えているわけですよね」
時に見せる鋭い眼つきにがっしりとした体躯からは想像しにくいが、岩見が追求するのは「緑による安らぎ」の提供である。
「水生植物」という
マーケットの創造
メダカシリーズやビオトープのセットのように同社の商品のほとんどはオリジナルだ。取引先の園芸店やホームセンターなどで顧客の需要や動向を調べながら、一つひとつを形作ってきた。岩見によれば、そもそも同社が手がけるまで水生植物というカテゴリーはなかった。それまでハスやスイレンなどは「園芸植物」というくくりだったそうだ。
同社の所在地である城陽市は京都府の南部に位置する。10kmほど北に向かえば「月桂冠」や「黄桜」、「松竹梅」など全国に知れ渡る銘柄の酒蔵が建ち並ぶ伏見がある。その名はもともと「伏水」で、地下水が豊富なところからきているというのが有力な説だ。方向を変えて西に同じような距離を進めば、サントリーのウイスキーやビールの工場が見えてくる。城陽市にしても水に恵まれ、それを活かして水辺に生える植物の一大産地として発展してきた。その草花は古くから京都や大阪などの華道業界で愛されている。
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岩見悦明 イワミエツアキ
(株)杜若園芸
代表取締役
1963年、京都府城陽市生まれ。龍谷大学経済学部を卒業後、奈良の南都銀行に入行。27歳で退社、花屋で半年間の研修を経て、家業の農家を継ぐ。95年、(株)杜若園芸を創業。1haで受け継いだ経営面積を5haまで広げる。家族は祖母、両親、妻、子ども3人。
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