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派生的に商品を増やし、多方面の顧客を獲得する。こうした事業展開にはモデルケースがある。「企業秘密」ということなのでその社名は明かせないが、岩見がその代表と懇意にしているある農業法人は果樹の生産に加え、それを原料に化粧品の製造・販売にも着手するようになった。それで年商はわずか10年で40倍、40億円を超えるに至ったという。
販売方法にしてもその農業法人を参考にしている。それで2年前に始めたのが通信販売で、誰もがその名を知るいくつもの会社のサポートを手がけてきたコンサルタントに依頼し、顧客の新規獲得に向けて自社のDMの内容やその発送時期などを学んでいるところだ。まだ始めて2年目だが、そのかいあって売上は確実に伸びている。
「これからは農業者も小売に力を入れなあかんと思っているんです。今のところ、農業界では自分で自社ブランドを売っているところはそんなにない。でも、自社ブランドを自分で価格を付けて売っていかないと生き残れないですよ。ただし、農業者が店舗を持つのは難しい。でも、通信販売ならできますよね」
年商100億円に向けて事業部門の再編も進める。水生植物の生産と販売に加えて美容と貿易の2事業を発展させる。貿易事業では現在すでにタイに5haの生産委託農場を持っている。また、同国では器や鉢の製造も委託しており、国産よりも安価に仕入れるなど実績はある。今のところ、取り扱っているのは水生植物に関連したものだけだが、今後は農業全般の物品の輸出入を手がける。
そのために力を入れるのが雇用と人材教育。雇用についていえば、これまで農業高校や農業者大学校の卒業生を雇い入れてきた。そうした学校の卒業生は農業生産に向く職人肌が多いという。すでに生産部門では多くの人材を獲得できた。ただ、これからの時代は経営としての才覚が一層必要になると考えている。だから、昨年から大学の新卒者でその分野でのプロパーとなりたい人材を積極的に採用している。
社会から頼りにされる企業へ
ところで、なぜ100億円を目指すのか。岩見のように上昇志向が高いと、性格上それも当然といえるが、別に大きな理由がある。
「企業も人も社会からあてにされるようにならなあかんと思うんですよ。会社は大きくなればなるほど社会での貢献度が高くなる。多くの人を雇えるし、地域のためにもなる。だったら、たくさんもうけて人を幸せにしたい」
そうした発言の根底にあるのは「感謝」の気持ちだ。
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岩見悦明 イワミエツアキ
(株)杜若園芸
代表取締役
1963年、京都府城陽市生まれ。龍谷大学経済学部を卒業後、奈良の南都銀行に入行。27歳で退社、花屋で半年間の研修を経て、家業の農家を継ぐ。95年、(株)杜若園芸を創業。1haで受け継いだ経営面積を5haまで広げる。家族は祖母、両親、妻、子ども3人。
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