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同伴者たち

商売の原点は嘘のない状態で自分の心をどう伝えていくか/東京青果株式会社野菜第4部副部長山田光男氏

首都圏の青果物流通を担う東京・大田市場でも最大の取扱高を受け持つ東京青果は、発祥を江戸時代にまでさかのぼれるほどの歴史を持つ卸売会社であるが、近年の小売を主導とした流通業界の変革や農業を取り巻く環境の変化に対して最も敏感な目を持った企業でもある。もちろん市場目体もそうした変化への対応を行なっていくが、山田副部長はその動きの中でも変えてはいけない部分、大切にすべき商売に対する考え方がなおざりにされていないかと警鐘を鳴らす
やって楽しい農業をめざす金は後からついてくるもの


 農家もコストがかかっている以上、基本的にはやはり「高い」、「安い」を必ず問題にします。しかし価格先行型で考えていくと、お客さんがついてこれなくなってしまう。お客さんというのは、相手の“親切”が買いたいわけですから、そういう心が感じられるもので、なおかつうまいもの、新しいフレッシュなものを作り、揃えなくてはいけない。それを実現するのがわれわれの壮事です。

 問題はそれをどうやって実現するか、それを農家に理解してやってもらうためにはどうしたらいいかですが、私ならまずその産地に入り込みます。そして「こういう要望がお客さんからあるよ」と伝えて、それができるかできないか答えてもらう。みんながこれまでやっている農業の中で、少しでも軽減できるコストは軽減して、その上でなおかつ“楽しい農業”ができないかをいっしょに考えられる人たちを探すわけです。

 私は趣味と仕事が一緒なんですが、たとえばこの間も川で釣りをしながら周りを眺めていたら、牧草地に菜の花が山ほど生えていた。「あ、これ売っちゃおう」と思ったんですね。それでさっそく農家のところへ行った。

 菜花を作ろうと言ったら、やっぱり最初は嫌がりましたよ。手間がかかると言ってね。人形作りのようにきれいに束ねて包むと、1日一生懸命頑張っても、2ケースくらいしか作れない。それで値段はたしかに200円にも300円にもなるけれども、100円になっちゃうときかある。だから嫌たというんです。でも私の作戦はちょっと違ったわけです。

 「おじいちゃん、おばあちゃん、いままでやってた菜花の作り方、ちょっと変えますから」ってね。生えているのを鎌で刈ってきて、あとは鋏で切りそろえる。

 「何mの長さにするんだ?」って聞かれたら、「何mなんて計ることないよ。このくらいの長さ。手え出してごらん、ばあちゃんの手の中指の第一関節までくらいだよ」って具合に教える。

 そしてそれを丁寧に束ねたりしないで、そのまま袋に詰めてもらった。このやり方でやると、1日10ケースできる。それならということで始めてもらったんです。

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