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特集

小さな顧客と価値を共有する経営者たち


まだまだ販路は増えそうである。拡大する気はないのか尋ねたところ、これまでの経験を踏まえて明確な言葉が返ってきた。
「私は、今、経営的にはこれ以上のことは目指していない。私はもともといろいろ会社を経営してきましたが、会社の規模を大きくすると元の仕事の感覚に戻ってしまう気がします。拝金主義になってしまう。いつまでも農家としての感覚でいたい。売上も十分ですし。むしろ、自分が身につけたことや勉強したことを、周りの農家に伝えたいです。中山間地ですが、1年中作物が作れる地域なので、私みたいな農家がたくさん出てきて当たり前の環境ですから」


【森田 浩文】
1973年、佐賀県神埼郡生まれ。
福岡大学卒業後、金融コンサルタントとして開業。闘病生活を経て投資会社を設立。その後、兼業農家の実家で就農し5年目。農園とレストランを開業し、農業生産法人を設立。

農業生産法人ナチュラリズム株式会社
http://yoshinogariyasai.com/
佐賀県神埼郡
吉野ヶ里あいちゃん農園:野菜5ha、米2ha。野菜400品種。
直営レストラン「やさい道場百匠飯」
農作業・レストランの従事者:本人、両親、妹、正社員2名、パート11名。


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荻野製茶/風土を生かしたブランドで個人顧客をつかむ

荻野製茶は、静岡県富士市の山間部、大渕地区に茶畑6haと製茶工場を持つ。海抜500mの標高を生かした荻野製茶オリジナルブランド「龍神茶健」は「ふじのくに山のお茶100選」の入賞茶の一つでもある。長年付き合いのある問屋と地元の個人顧客に直販することによって、近年のお茶の相場低迷にも負けない経営を続けている。オリジナルブランド作りの背景と、そのブランドを通じた個人顧客へのプロモーションを紹介したい。

荻野製茶の製茶工場の向かいには、お茶の試飲・販売やイベントのためのスペース、「茶空間Ogino」がある。そこに一つの昔話が掲げられている。
「むかしむかし、富士山のふもとに……。めでたしめでたし」
荻野製茶が作った二つのオリジナルブランド、『龍神茶建』と『姫の里』の元になったという若者と姫の話である。近くの小学生が見学に訪れた際、引率の先生がこの話をじっくり読んで荻野製茶の4代目、荻野政治氏(37)に尋ねた。
「大渕地区に、こんな伝説があったのですね」
「いえ、僕が作った昔話です」
これだけ聞くと笑い話になりそうなのだが、荻野氏は、品質へのこだわりに加え、富士市大渕地区の風土を生かした世界観を表現したオリジナルブランドを考えたのである。

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