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江刺の稲

“土を作れば作物は勝手に育つ”を語る「土の匠」

  • 『農業経営者』編集長 農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則
  • 第215回 2014年03月19日

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この雑誌を始める二十数年前、筆者はスガノ農機(株)の前社長、菅野祥孝氏や同社営業マンたちと全国の篤農家を訪ね歩いた。プラウメーカーであるスガノの営業方法は農機業界にあって極めて異色だった。
農機業界の流通は、大手トラクターメーカーが系列化した販売会社や農協系統ルートを通じて営業・販売されるのが一般的だ。スガノも伝票はそのルートを通すのだが、同社の場合は営業マン自身がこれはと思う見込み顧客を直接訪ねていた。畑作が主流の北海道はともかく、水田農業が中心でトラクターとセットで販売されるロータリーでのかくはん耕が標準技術になっている府県でプラウの価値を伝えることは、トラクターメーカーや販売店任せでできることではなかった。それと同時に、当時はプラウとサブソイラーという二つの「土作業機」に商品を限定して農業者とともに「土を考える」ことを通して自らの企業を成り立たせようとしてきた同社の理念が、営業というお客様との出会いを人任せにすることはできなかったのだ。
当時の同社の営業は、新聞や雑誌の広告に反応してきた農家を訪ね、ひたすら「土」、あるいは「土と農業」を語り合うことだった。筆者から見れば土と農業を語る宣教師といってもよい前社長だったが、同氏はいつも「農家に学べ」と言い続け、篤農家の言葉に耳を傾けた。
そのころのスガノの営業マンたちは、その価値を理解する農家がいても、田にプラウを入れると、地主たちから「田んぼが壊れる」と言われ、プラウで畔際に溝ができることを「どうしてくれる!」と批判された。しかし、プラウ耕を続ければこそ土質が均一になり、同社によるレーザーレベラーの開発と営業によって、今ではそうした批判も少なくなった。それどころか、水田といえどもプラウなどの畑作作業機が導入されることによって、無代かきの乾田直播が実現するのみならず、本誌が主張するトウモロコシを含めた水田農業イノベーションともいうべき水田経営の可能性も生まれてきたのだ。
そんな時代に、筆者は菅野祥孝氏と茨城県牛久市のダイコン農家、鈴木茂氏を訪ねた。そのとき、鈴木氏はこう言った。
「作物は“作る”のではなく、“できる”もの。土を作れば作物は勝手に育つ。農家の仕事とは作物が育つ条件を整えること」

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