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小川幸夫の虫の世界から見る農業

ミツバチは大切に、人間との共存共栄を

農業では昆虫は毛嫌いされる存在だが、ミツバチはなぜか人間にとても愛される。それは、ミツバチが人間も好きな甘いはちみつを集めるからだと思う。しかしよく考えると、虫が口で吸ったり出したりするものを、虫を毛嫌いする人間がよく喜んで食べるものだと感心する。そんなミツバチが農業で重宝されるのは、野菜や果物作りで受粉というとても面倒な作業を手伝ってくれるからに他ならない。
筆者の農場にはたくさんのミツバチがいる。以前からなじみ深く、イチゴ栽培の受粉で養蜂家からレンタルで借りるところから始まり、その後購入するようになっていつの間にか自分でハチを育てるようになった。とはいえ、昆虫は好きでもミツバチを含めハチ自体は好きではなく、興味もない。他の昆虫と違ってハチは刺すからである。ただ、仕事でミツバチを使っているとそうも言っていられず、自分で管理できるようになりたくなった。現在では、ミツバチの特性に興味を持ってしまい、ポリネーション(受粉)に使うことよりも観察することや保護することのほうが目的になっている。

女王バチの死に際して
働きバチたちはどうする?

ミツバチを飼っていると、おもしろい行動に出くわすことがある。ミツバチのほとんどはメスで、針もメスだけが持っている。これは産卵管が変化したものであり、オスには備わっていないため、人間が刺される心配はない。
そんな通常は数少ないオスは巣箱の外でよく死んでいる。女王バチとの交尾のためだけの存在であるオスは、みつや花粉を集めるといった労働はせず、メスの働きバチたちが集めてくるはちみつを食べるだけの怠け者である。したがって、必要以上にオスが増えてくると、家族から不要な存在として殺されたり、追い出されたりする。
次は、女王バチを巡るメスの働きバチたちの不思議な行動である。巣箱にいる女王バチは基本的に1匹で、働きバチの寿命がおよそ1~2カ月なのに対して、女王バチは約3年と長い。その女王バチの産卵能力に問題が生じたり、死んでしまったりすると、働きバチたちはなんと自ら卵を産むようになる。卵を産まない女王バチに代わって、働きバチたちが皆で競って産卵するのだ。一般に女王バチは1つの巣穴に1つの卵を産むが、この働きバチたちの産卵では1つの巣穴に3~7個ぐらいの卵が産み付けられる。そのうちの1つが幼虫として育つものの、無精卵のため、すべてがオスになる。最終的にはオスだらけのミツバチの群になって消滅していく。これは推測だが、そんなオスも女王バチ不在の巣穴に居残るのではなく、どこかの女王バチとの交尾を狙って飛び立ち、結果として遺伝子を残していこうとする理にかなった状態になるのだと思われる。

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