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同じようなことは、フロマンも口にしているかもしれません。ただ記事にされたという点で、甘利にはイエローカードです。その記事は、東京の米国大使館が記事を英訳して米通商代表部に送っているはずですから、甘利が今後、フロマンと信頼関係を築くのは、よほどのことがない限り、無理ではないかと思います。
会議直前まで「合意」疑わず
参加12カ国で、2月のシンガポールの閣僚会合での「合意」に最後まで望みを捨てなかったのは、日本だけだったでしょう。マレーシアのスタバ・マハメド通産相は、会議を開く1週間も前から地元のニュー・ストレート・タイムズ紙に『近いうちに妥結することはない』(2月15日付け)と言い放っておりました。
これを反映してか、閣僚会合は低調のようでした。閣僚会合の実態は、同28日付け全国農業新聞がこう伝えておりました。
「参加12カ国で最終日まで閣僚が現地に滞在していたのは8カ国。ペルーとチリは参加しておらず、マレーシアとブルネイの閣僚はそれぞれの国内事情などもあり、(2日目の)23日に帰国していた」
最初、この記事を目にしたときは、わが目を疑ったものでした。例えば日本経済新聞は、モハメド通産相が「合意なし」と明言した2日後の17日付けでも、「TPP交渉官会合開始へ 閣僚会合での大筋合意狙う」と報じておりました。「合意」よりトーンダウンした「大筋合意」という表現を使っておりますが、閣僚会合であるにもかかわらず、4日間の日程で2日目以降、参加12カ国のうち、3分の1の国の閣僚が、不在だった事実を、この新聞はどう取り扱ったのでしょうか。
この事実はシンガポールでの閣僚会合の成否を見極める上で第一級の事実だと思います。そのニュース・ソースを確認するため、全国農業新聞に電話をかけてみました。
「シンガポールの閣僚会合で、取材にやって来た記者を相手に政府代表団がレクチャーしたものをそのまま記事化したものです」
日本経済新聞も知っていたということになります。ここから肝心なことを伝えようとはしない日本メディアの本質部分を垣間見る思いがしました。シンガポールの取材現場ではちょっとした事実からでも真実を求める取材記者の原点は完全に消え失せ、事実を目の前にしても、そのニュース・バリューを自分の頭で判断することができないようです。その結果、ニュー・ストレート・タイムズ紙とは真逆の内容を報じた見出しが紙面に躍ることになるのです。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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