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シンガポールでの閣僚会合後に、米経済紙フィナンシャル・タイムズが、甘利とフロマンが共同記者会見したときのスナップを掲載しておりました。浮かない表情している甘利に対し、余裕たっぷりの態度のフロマンという絵柄で、フロマンに勝負あったという印象を受けました。それで思い浮かべたのは、座右の書、『失敗の本質~日本軍の組織的研究』(中公文庫)です。
「日本軍の失敗の過程は、主観とか独善から希望的観測に依存する戦略目的が戦争の現実と合理的論理によって漸次破壊されてきたプロセスであった」(274ページ)
今回のTPP交渉は、農産物重要5品目については、何の根拠もないのにもかかわらず、相手が関税撤廃の例外にしてくれると勝手に思い込み、メディアを通じてその空気を醸成させて交渉に臨んだものの、その楽観的な考えが相手の示した「TPPの輪郭」との合理的論理の前に見事に打ち砕かれたと総括できるのではないでしょうか。早期合意の報道を垂れ流し続いてきたメディアの敗北でもあります。
これまでの交渉を振り返ると、米国にも敗北感が漂う結果になったことは否定できません。オバマ政権が掲げた「早期合意」が実現しなかっただけではありません。安全保障上の弱みに付け入り、相手にとってどれだけ不利な条件でも強引に飲み込てしまう米国が操るTPP交渉の構図なり手法が、満天下に明らかになったことです。これは米国通商外交にとって大きな痛手となったものと思います。
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土門剛 ドモンタケシ
1947年大阪市生まれ。早稲田大学大学院法学研究科中退。農業や農協問題について規制緩和と国際化の視点からの論文を多数執筆している。主な著書に、『農協が倒産する日』(東洋経済新報社)、『農協大破産』(東洋経済新報社)、『よい農協―“自由化後”に生き残る戦略』(日本経済新聞社)、『コメと農協―「農業ビッグバン」が始まった』(日本経済新聞社)、『コメ開放決断の日―徹底検証 食管・農協・新政策』(日本経済新聞社)、『穀物メジャー』(共著/家の光協会)、『東京をどうする、日本をどうする』(通産省八幡和男氏と共著/講談社)、『新食糧法で日本のお米はこう変わる』(東洋経済新報社)などがある。大阪府米穀小売商業組合、「明日の米穀店を考える研究会」各委員を歴任。会員制のFAX情報誌も発行している。
土門辛聞
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