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新・農業経営者ルポ

伝える風味、風土、風景と取り戻すべき地域の誇り


ただ、増産が進むにつれて問題が生じてきた。その日に集めた栗を、その日のうちに加工できなくなってきたのだ。加工場の1日当たりの処理量は3t。それを超える量が集まり、加工を翌日以降に回さざるを得なくなってきた。そうなると鮮度が落ちてしまい、他県産を使うのとなんら変わらなくなってしまう。
そこで、栗を一次集荷するJAに頼み込んで、導入してもらったのがCAS冷凍システム(セルアライブシステム)だ。これは、農家が出荷してきた栗を加工した後、マイナス60度で急速冷凍する装置である。

自社のビジネスモデルを全国へ

こうした自社のビジネスのやり方について、鎌田は「風味、風土、風景という3つの風を吹かせること」と表現する。風味というのは地域の食文化。恵那川上屋にとってのそれは何よりも栗である。風土は地域の素材とそれを作る人々。そして、風景は地域の情景や文化、芸術である。
これは商品にも現れている。たとえば、栗きんとんでは四季に応じた商品づくりをしている。春に出す「里長閑(さとのどか)」は恵那地方特産である長イモを練った生地で栗きんとんを包む。白い皮は岐阜、愛知、三重に自生するモクレン科のシデコブシの花を思わせる。冬の「天日果喜(てんぴかき)」であれば、長野県南部の名物である市田の干し柿を細かく刻んで白あんに加えた皮で、栗きんとんを包んでいる。
東濃地方で3つの風を吹かせることに成功した今、同じことが別の地域でもできないかと思うようになった。そこで着想したのが「里の菓工房構想」。コンセプトは「地域の素材を、地域の人々が地域で加工し、地域のお客様に喜んでいただく」というものだ。
たとえば、和洋菓子の原料となるリンゴや柿で取引先があった長野県飯島町では、09年に加工場と販売店を兼ねた「信州里の菓工房」を設立した。栗が不足しているため、栽培してくれる農家を県内外で探していたところ、飯島町長が先導役となって農家70人を集めてくれたのだ。当初、彼らが生産する栗は恵那に運んで加工するつもりだった。でも、それでは自社の理念に反する。そこで、飯島町で生産した栗は地場で加工と販売をして、「信州伊那栗」というブランドを築くことにした。
栽培技術については、塚本氏や農業生産法人恵那栗の従業員らに指導に当たってもらっている。また、CAS冷凍システムも導入するなど、この地でも3つの風を吹かせている。

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