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小川幸夫の虫の世界から見る農業

畑の昆虫ハンター、アシナガバチ

今回はアシナガバチを取り上げる。筆者は、この昆虫を「畑の自動殺虫剤」だと認識している。大きめな害虫を探索して殺し、肉団子にして自分の巣に持ち帰る。筆者の畑には主に2種類のアシナガバチがおり、とくに多いのが「フタモンアシナガバチ」である。
ハウス7棟計2反のハウスの中に、毎年約30個の巣を作る。1つの巣には30~50匹、多いと100匹近い成虫が活動する。露地には「コガタアシナガバチ」が毎年10~15個ほどの巣を作る。巣はフタモンアシナガバチより小さく、成虫の数も少ない。たまには大型の「キアシナガバチ」の巣も軒下などに作られることがある。5~6月の繁殖期にはイモムシをはじめとする昆虫を捕まえ、幼虫に与えるご飯として次々に巣へ運ぶ。ホバリングが上手で、ハウスや露地を縦横無尽に飛び回ってたくさんの幼虫の狩りをする。

ハチの狩人

アシナガバチはの一種である。狩人蜂とは昆虫を狩り、幼虫の食糧とするハチの仲間を指す。通常、と言うが、筆者は社会性のあるこのハチたちが擬人化された「狩人蜂」という呼び方を好む。ちなみに、数多くいるハチはそのほとんどが人間にとって益虫である。一部植物に危害を与えるハバチ、タマバチ、キバチなどがいるが、ミツバチを含めたハナバチや他昆虫への寄生蜂、そして狩人蜂は農業では益虫で、狩人蜂だけでも日本で約1000種はいる。フタモンアシナガバチはこの1種類にしか過ぎず、とくにビニールハウス内に営巣するのが好きなハチである。コアシナガバチは露地の庭木の中などでよく見かける。

ハチによって巣を作る場所や高さ、向きなどが異なる

フタモンアシナガバチは、雨よけビニールハウス内の肩の部分、地上120cmぐらいのところに好んで巣を作る。他のアシナガバチたちが巣の向きを下向きにするのに対し、フタモンアシナガバチは横向きにする。この巣の向きが重要で、フタモンアシナガバチが雨よけビニールハウス内に巣を作りたがる大きな理由と考えられる。巣の向きが横だと雨風が直接幼虫たちに影響するため、自ずと雨風を防げるビニールハウス内を好むことになる。巣の高さは気温が20~30度というちょうどいい温度になるからだろう。
さて、もう1種類のコガタアシナガバチは主に露地の石や庭木などに巣を作る。高さは地上60cmほどで、人間の膝下くらいになる。巣の形は下向きの船底型で、雨が降っても巣の中に水がたまりにくく、外で巣が作れる。高さが60cmほどのところに巣を作る習性は草の伸びる高さに関係しているのではないかと考えられる。ちょうど繁殖期に外敵から自分たちの巣を守るためには草が重要で、草で巣が隠れる60cmほどの高さが好都合なのだろう。もちろん、ハウス内にも作ることがあり、昨年は初めて3個ほどの巣を作った。

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