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一気通貫で関わる企業側は、計画的な生産・輸出が可能になり、品質面でも均質な飼料原料、食肉原料を確保できるというメリットを享受できるわけだ。民間主導で展開している構造が、農協の勢力が強い日本とはそもそも大きく異なる。
国際相場の上昇の影響
タイが自国の産業を活性化させている間も、我が国では飼料用トウモロコシを輸入に頼り続けてきた。日本のトウモロコシ輸入量とその平均輸入価格を図3に示した。昨年は米国のほかウクライナ、ブラジルからの輸入量が多かったが、平均輸入価格は00年を過ぎて高騰を続け、輸入量が減少するほどに飼料調達は追い込まれる形になっている。タイでの飼料生産を開発したように、新たな調達先の模索もリスク回避には重要だが、日本国内での生産では割が合わないという思い込みも今の時代なら打破できる可能性がある。
かつての高米価時代には、トウモロコシの輸入価格は1当たり12~20円台を維持していた。圧倒的に、畜産農家としては飼料を購入し、コメを作付けして販売するほうが儲かったのだ。賢い商売人であれば、トウモロコシを自給するという選択肢は考えられなかったはずである。
ところが、国際価格が高騰したいま、海外のトウモロコシを安価で持ち込むという日本の畜産業界の「常識」が狂い始めている。同時に、高米価政策も転換を迫られ、水田での飼料生産に交付金がつくようになった。品種の収量性が向上し、生産しやすくなったトウモロコシは、水稲に比べて生産に必要な労働時間が少なくて済む。前回紹介したようにこの優位性は、タイの農家にとっても作付け品目を選ぶために水利条件とともに天秤にかける重要な要素にもなっている。コメかトウモロコシか、その他の野菜か。日本でも同じ状況ではないだろうか。
とはいえ、タイの乾季は気温が高く多雨を避けられるというトウモロコシ栽培には有利な条件を備えている。日本は高温期にしばしば降雨に見舞われ、近年は局所的な豪雨にも襲われるリスクは高まっているので、環境条件は不利かもしれない。
しかし、原野を開墾した当時は肥沃だったタイの農地は、トウモロコシの成長に必要な大量の窒素成分を化学肥料に頼る傾向にある。現在でも栽培が始まった当初と同じ方法で、人が地面に穴をあけ、種を蒔いていて、機械作業による深耕や土壌微生物の有効活用といった取り組みは、まだ普及していない。排水性の悪い圃場や灌がいが不十分な圃場、雑草が繁茂した条件では、タイでもトウモロコシは十分に成長しない。虫や病気の被害や嵐による倒伏のほか、雹による被害も報告がある。
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