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【特集】
有機物循環業宣言
- 編集部
- 1996年06月01日
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「食品加工業も流通も、安いからといって原料や商品を海外から輸入するところばかりだ!」そう嘆く人は多い。だが、われわれのうちいったい何人にそれを批判する資格があるだろうか。「これを使ったほうが安あがりだ」といって撒いている化学肥料の成分で、国内に産するものはごくわずかなものだ。それを使う判断をした人が、加工や流通の輸入依存を批判しているのは、いささか滑稽というものではないか。そして、その加工も流通も農業も、輸入品の利用で原材料のコストダウンに成功したとうそぶきながら、背中には山ほどの廃棄物を抱え、その処理のために莫大なコストをかけているのである。そろそろ「これはどうもヘンだ」と気づいていい時期なのではないか。問題は、農業が製造業の真似をしたところにありそうである。農業が“作物製造業”であるならば、原材料のコストダウンとそのための海外依存はむしろ道理である。しかし本来の“農業”にとって、作物の生産はその仕事の一部に過ぎなかったのではないか。加工、流通、消費が、農業から生まれた作物を呑み込み、彼らが吐き出した廃棄物を農業が呑み返す。そのことで、貴重な資源を国土の中で循環させる。農業とは、その循環を司る重要な仕事であったはすだ。この循環の環の頂点に農業の確固たる。“居場所”を取り戻せば、もう誰も国内の農業をないがしろにはできない。そこにこそ、農業の本当の利益があるはすだ。
ソリトン・プラン 生命の応援団がめざす循環の事業化
堆肥原料を出す顧客、堆肥化プラント、堆肥を活用する生産者、そして作物を配送するトラックの“戻りカゴ”という堆肥原料を運ぶ手段。産直組織は循環ビジネスにはうつてつけのシステムだった!
「生ゴミの資源化を、農家の側から仕掛けられないか……」
本誌14号の「農業経営者ルポ」にも登場した「生命(いのち)の応援団」代表の塚田猛さん(44)はこう考えた。
1988年に塚田さんが発足させた産直組織「自然派ネットワーク」は、「生産者と消費者の垣根をとりはらった、食糧を中心とする生活者同盟」をめざして、昨年5月発展的に解消、現在の名称の組織になった。その彼らが新たに着手したのが、上の図に示した、都市と農村を結ぶ「循環の環」をビジネスとして展開することである。
産直の取引先が増え、新たに売場を開設したスーパーへ納品で訪れるようになった塚田さんは、そこで毎日出るゴミの山を目の当たりにする。300平方メートル程度の標準的な売場面積を持つスーパーで、1日のゴミの量は約1t。その2~3割に相当する生ゴミの処理に手を焼く現場の声を耳にした。そしてほぽ同じ時期、塚田さんの友人が試作を開始していたのが、生ゴミの乾燥・醗酵プラントだった。
アイデアが浮かんだ。可燃ゴミを燃やす焼却炉に、この乾燥・醗酵プラントを組み合わせてはどうか。それをスーパーに設置してもらい、処理後の生ゴミを回収すれば堆肥の原料となる。運搬は簡単。野菜の納品を終えて帰る車の空の荷台に積んでくればいい。
堆肥の生産には、既に6年ほど前からつくば市谷田部で稼働してきたプラントが使える。もともとはビール粕の処理依頼を受けて設けたもので、まだ能力的に余裕がある。いまでは関東一円のビール工場から搬入される粕や、 地方競馬場からくる厩肥、食品加工場の残流などを扱い、できた堆肥(塚田さんの表現では「微生物の食糧」)は、約100軒の農家で土壌改良資材として利用されている。
これで、生ゴミを「分別↓乾燥↓運搬↓醗酵↓活用」の流れに乗せるべき各段階の役者がそろう。この循環モデルを、塚田さんは「ソリトン・プラン」と名づけた。“孤立しながら動き続ける波”を意味するソリトンという言葉に、「生命の循環」の思想を代弁させながら。
今年2月、塚田さんは、プラント製造・販売メーカー、プラントの導人主となる生ゴミの排出事業所、さらには生産者団体、商社などに呼びかけて、生ゴミの資源化を目的とする「日本ソリトン協会」を設立。堆肥原料の回収実務や、それに要する費用徴収などの細則を決めた上で、事業の本格化に向けて動き出した。既に試験段階を終えて実用化に踏み切った例としては、東京都板橋区を中心に約10店を展開するスーパーのローカルチェーンがある。
もともとこのプラントは大型のショッピングセンターの規模に合わせて設計したものだが、同社の場合は自社の配送網を利用して生ゴミを1店舗に集め、そこで乾燥し、生命の応援団の配送車に引き渡す形をとっている。また、この秋には小規模単独店でも設置可能な小型プラントの開発がなされる予定で、普及の促進が期待されるところだ。
ゆくゆくは全国に協会の支部ができて、各々の守備範囲で「地域内循環システム」が機能していくのが理想だと、塚田さんは語る。
ソリトン・プラン 生命の応援団がめざす循環の事業化
循環の事業化
堆肥原料を出す顧客、堆肥化プラント、堆肥を活用する生産者、そして作物を配送するトラックの“戻りカゴ”という堆肥原料を運ぶ手段。産直組織は循環ビジネスにはうつてつけのシステムだった!
「生ゴミの資源化を、農家の側から仕掛けられないか……」
本誌14号の「農業経営者ルポ」にも登場した「生命(いのち)の応援団」代表の塚田猛さん(44)はこう考えた。
1988年に塚田さんが発足させた産直組織「自然派ネットワーク」は、「生産者と消費者の垣根をとりはらった、食糧を中心とする生活者同盟」をめざして、昨年5月発展的に解消、現在の名称の組織になった。その彼らが新たに着手したのが、上の図に示した、都市と農村を結ぶ「循環の環」をビジネスとして展開することである。
産直の取引先が増え、新たに売場を開設したスーパーへ納品で訪れるようになった塚田さんは、そこで毎日出るゴミの山を目の当たりにする。300平方メートル程度の標準的な売場面積を持つスーパーで、1日のゴミの量は約1t。その2~3割に相当する生ゴミの処理に手を焼く現場の声を耳にした。そしてほぽ同じ時期、塚田さんの友人が試作を開始していたのが、生ゴミの乾燥・醗酵プラントだった。
アイデアが浮かんだ。可燃ゴミを燃やす焼却炉に、この乾燥・醗酵プラントを組み合わせてはどうか。それをスーパーに設置してもらい、処理後の生ゴミを回収すれば堆肥の原料となる。運搬は簡単。野菜の納品を終えて帰る車の空の荷台に積んでくればいい。
堆肥の生産には、既に6年ほど前からつくば市谷田部で稼働してきたプラントが使える。もともとはビール粕の処理依頼を受けて設けたもので、まだ能力的に余裕がある。いまでは関東一円のビール工場から搬入される粕や、 地方競馬場からくる厩肥、食品加工場の残流などを扱い、できた堆肥(塚田さんの表現では「微生物の食糧」)は、約100軒の農家で土壌改良資材として利用されている。
これで、生ゴミを「分別↓乾燥↓運搬↓醗酵↓活用」の流れに乗せるべき各段階の役者がそろう。この循環モデルを、塚田さんは「ソリトン・プラン」と名づけた。“孤立しながら動き続ける波”を意味するソリトンという言葉に、「生命の循環」の思想を代弁させながら。
今年2月、塚田さんは、プラント製造・販売メーカー、プラントの導人主となる生ゴミの排出事業所、さらには生産者団体、商社などに呼びかけて、生ゴミの資源化を目的とする「日本ソリトン協会」を設立。堆肥原料の回収実務や、それに要する費用徴収などの細則を決めた上で、事業の本格化に向けて動き出した。既に試験段階を終えて実用化に踏み切った例としては、東京都板橋区を中心に約10店を展開するスーパーのローカルチェーンがある。
もともとこのプラントは大型のショッピングセンターの規模に合わせて設計したものだが、同社の場合は自社の配送網を利用して生ゴミを1店舗に集め、そこで乾燥し、生命の応援団の配送車に引き渡す形をとっている。また、この秋には小規模単独店でも設置可能な小型プラントの開発がなされる予定で、普及の促進が期待されるところだ。
ゆくゆくは全国に協会の支部ができて、各々の守備範囲で「地域内循環システム」が機能していくのが理想だと、塚田さんは語る。
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