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特集

私家版・農業界だけで通用する用語辞典


筆者は天下の『広辞苑』に物申すJAほどの度胸はありません。「健全な農家経営・農村生活」を願う天下のJAが、営農体制の解体や支店の統廃合、過疎地からのAコープ撤退などを推し進めて農家が困っているなんて、口が裂けても言いません(書きましたが)。

【普及】ふきゅう
一般に「広く行き渡らせること」。「携帯電話の普及」「地デジの普及」「民主主義の普及」など、それまでなかったものを、なかったところへ行き渡らせることを言う。
農水省の「普及事業」とは「都道府県の専門の職員が、農業技術経営に関する支援を、直接農業者に接し行なう事業」を指す。内容は「技術支援、農業経営支援、農村生活の改善支援」ということになっている。しかし、「支援を、直接農業者に接して行なう」ことであるので「農業技術の指導」「経営知識の伝達」と呼ぶことがより正確である。
「普及」は耳ざわりのよい言葉だが、「普及事業」と言った用法では「普及」に位置づけられた対策の重要度、緊急性が伝わりにくく、目的や内容が曖昧になりがちである。
《普及指導センター、普及指導員》
「普及と指導」なのか「普及を指導」なのか不明。また、なんの普及指導であるのか、農業以外の産業の人にはわからない。各都道府県レベルの普及指導センターの場合、たとえば岡山県であれば「岡山農業普及指導センター」と呼ばれるが、まるでその地にこれまで農業がなかったかのような印象を与える。
まずは、明確な名称の意味の「普及」が先決である。

【転作】てんさく
以前から栽培してきた作物の種類を別のものに変えること。ただ、コメの過剰作付けが問題になってきた日本では、専ら水田でコメの代わりに大豆や麦などを作付けすることを意味してきた。でも、水田で大豆や麦を栽培するなんて難しい。だから、転作をすると穫れようが穫れまいが、ありがたいことに農業者は国から交付金を頂戴できるという仕組みが作られたのだった。
たとえば現在の経営所得安定対策では、水田で麦や大豆、飼料作物を転作すれば10aごとに3.5万円をもらえる。さらに加工用米なら2万円、飼料用米や米粉用米なら5.5~10.5万円である。
あれれ? 加工用米や飼料用米はいずれもコメであるから、素人には転作ではないように感じてしまう。いやいや、農業のプロ集団である農水省が転作だと言ったら転作なのである。ケチをつけてはいけない。
この交付金だけで、毎年、数百万円から数千万円を稼いだ農業者は少なくない。突然降って湧いた交付金に、ある農業者は「国からいきなりボーナスをもらった気分」と言うほど。毎年数千万円の収入は、もはやボーナスとは言えない。

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