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【吉村明のみつひかり栽培日誌】
やや遅めの強い中干しで、倒伏に強い稲に
- 三井化学アグロ(株) 営業本部マーケティング部ハイブリッドライス 種子グループ グループリーダー 吉村明
- 第5回 2014年05月19日
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鹿児島県S市の4月4日を皮切りに、全国各地で「みつひかり」の田植えが始まりました。みつひかりは生育期間が日本一長い稲で、「田植えは早く、刈り取りは遅く」が一般的なパターンです。浅水管理で初期分げつを促進し、有効茎の確保に努めてください。 「順調に育苗開始!」と前号で紹介しましたが、その後、数件の育苗不良の連絡が入りました(写真1)。今年の4月は中旬まで最低気温の低い日が続き、発芽中の種籾の動きが止まったためと考えられます(図1)。浸種時の温度不足、吸水不足で発芽がばらつき、十分に芽出しをせずにハウスに並べると育苗不良が発生することがあります。「芽の動き」を必ず確認し、寒い時期の育苗には十分にご注意ください。 また、初めて栽培される方から、「こんな汚い種子は初めて見た」とのお叱りの連絡を頂きました。通常の品種の種に比べると外観に違いはありますが、芽さえ出れば問題ありません。 今年もいろいろなことが起きそうな予感がします。
「みつひかり物語」(5)
「みつひかりプロジェクト」
2004年から(株)吉野家を最終ユーザーとする「みつひかりプロジェクト」がスタートしました。初年度の(株)神明の集荷目標は3000t。農業団体や米集荷業者に栽培を依頼し、生産者を募ってもらうという従来型の普及方式を採りました。ところが、反収12俵でも目標の1割にも満たない約200tの集荷が望める程度の面積しか集まりません。一般の品種であれば、行政と農協が連携して普及しますが、みつひかりは民間品種で実績不足、信用されないことが小面積での栽培となった原因とその当時は思っていました。
栽培は概ね順調、この年は台風が多く上陸、刈り取りの遅いみつひかりへの影響が懸念されましたが大きな被害はなく、強稈で倒伏に強いことを証明できました。しかし、この時期、刈り取りのタイミング、篩目と品質の関係など、まだ栽培体系も未確立で、収量の低かった生産者から「反収12俵を保証しろ」と声が上がった産地もありました。そんな状況下での船出となりました。
同様の普及方式で3年間が経過しましたが、目標3000tの3割にも満たず、コメの実需者がいても広がらないのは事業性がないからと、07年には社内で事業撤退に向けた準備を進めるよう指示がありました。その一方、このプロジェクトさえ大きくなれば事業を継続できるはず、と新たな普及方式の検討を始めました。
時を同じくして(株)吉野家・小内バイヤーが発した「みつひかりって本当に割れないよね」(表1)の一言がその後のみつひかりの栽培体系を大きく変えることになるのです。
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吉村明 ヨシムラアキラ
三井化学アグロ(株)
営業本部マーケティング部ハイブリッドライス 種子グループ グループリーダー
1962年生まれ。1988年 北海道大学大学院農学研究科修了。同年 三井東圧化学(株)(現三井化学)入社、農業資材開発に従事(北海道工業所勤務)。1996年 本社異動後、ハイブリッドライス事業開発を担当になる。2000年に事業ごと三井東圧農薬⑭(現三井化学アグロ)に異動し、現在に至る。17年間「みつひかり」をライフワークに、全国を飛び回る。
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