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小川幸夫の虫の世界から見る農業

続・畑の昆虫ハンター、カマキリ

4月を過ぎるとたくさんの昆虫が畑に姿を見せるが、それを待っていたかのように卵からかえったチビッコカマキリがワサワサ出てくる。昨年、筆者の畑や周りの木々のあちこちに200近くの(カマキリの分泌物で守られた卵の塊)が産み付けられているのを確認した。
1つの卵鞘から現れる幼虫は数百匹に及ぶ。カマキリはさなぎにならない不完全変態という性質を持ち、生まれた幼虫のときからカマキリの形をしている。5月までに次々と誕生し、この時期の畑はカマキリの幼虫だらけになる。しかし、最終的に生き残る個体はほんのわずかで、いかに生存競争が激しいかが想像できる。とくに無防備な状態で生まれる瞬間はアリの攻撃を受けることが多く、また生まれたての個体は弱小で歩行性のクモなどに簡単に捕まってしまう。とはいえ、その時期を過ぎれば、昆虫間の食物連鎖の上位に立つ恐怖の存在になる。

脱皮とともに大きな獲物に
ターゲットを変更

カマキリは益虫か害虫かとても判断が難しいが、筆者は益虫に分類している。なぜ判断が難しいかというと、害虫も益虫も食べてしまうため、その時々でどちらともいえてしまうからだ。だが、カマキリは畑の肉食昆虫のなかでは上位に位置しており、そのおかげで偏りがちな害虫と益虫のバランスが保たれている。したがって、カマキリのような肉食昆虫は畑に欠かせない。
さて、カマキリは生まれながらにしてカマキリの格好をしていると述べたが、それは生まれた直後から獲物を捕れるということでもある。そんなカマキリのすごいところは、自分の体の大きさに合わせて獲物を変えていくところだ。脱皮を繰り返し、自分の体が大きくなるにつれて食べる獲物も大きくしていくという食性の広さは他の昆虫にはなかなかない。
生まれて間もないチビッコカマキリたちの餌は、アブラムシやダニ、コナジラミ、アザミウマといった極小害虫などになる。4~5月といえば、筆者のところではよくイチゴの畑に小さなカマキリが集まるが、これはイチゴに群がる小さな害虫たちを捕食しにきているからだ。極小の害虫を食べて脱皮すると、今度はハエやアブ、ハチを餌にする。こうして自分の成長とともに食べる獲物を変えていき、夏のセミや秋の大型のバッタ類など、ターゲットを変えて大きくなっていく。

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