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新・農業経営者ルポ

地域と歩む企業養豚の経営者


その言葉どおり、大谷は近所のガソリンスタンドに出かけては、そこの社長から町の情報を得てきた。町の人たちがフリーデンをどう思っているのか、地元と付き合う中で何に気をつけたらいいのか。それらを素直に聞き入れては、一つひとつ誠意をもって対応していく。5年経つと、地域の人たちも覚えてくれたそうだ。
「地域の人たちが、『君たちは(養豚業を)大きくやっているそうだね』って話を持ちかけてきてくれる。そのころになると、うちの牧場の社員たちは地元の女性と結婚していく。そうすると融和が出てくるんですよ、家族同士の付き合いができるから。10年経ったら、今度は地域の役が回ってくる。それでいろんな会議に出席するたびに、自分の仕事について誇りを持って話す。そうすると理解がもっと広がる。中にはあの企業と付き合ったら事業が広がると、異業種交流の具体的な提案もしてきてくれる人も出てきました」
話から想像するに大変な忍耐や苦労を要したと思うが、大谷にそう尋ねても「そんなことは感じたことはなかった。だって画期的なことをやっているという思いがありましたから、何もかもがとにかく楽しかったですね」と切り返された。八ヶ岳で養豚業を志してアメリカに渡り、そこで学んできたこと、思い描いた夢を一から実践できる場所を得られたのだ。それはたしかに充実した日々だったのだろう。
こうした大谷の姿勢は社風として根付いている。だからこそ、フリーデンは各地に養豚場を持つことができたのだ。秋田県北秋田市の養豚場については、フリーデンの各地での評判の良さを聞きつけて、逆に地元から誘致の声がかかったそうだ。

国産飼料の導入

地域とのつながりを大切にしている姿勢は飼料にも現れている。フリーデンは03年から国産の飼料用米の活用に取り組んできた。前任の八日市屋敏雄社長の時代、産官学連携の「飼料用米プロジェクト」に着手。自社の養豚場がある岩手県大東町(現・一関市)の小原伸元町長(当時)から町内における耕作放棄地の解消について相談を持ちかけられたことをきっかけに、同町と東京農業大学と共同で飼料用米の生産と養豚への給餌、養豚の排泄物による資源活用のあり方を模索してきた。
その結果、農業者戸別所得補償制度とそれに続く耕種農家への水田利活用の直接支払を活用することによって、耕・畜ともに再生産できることも確かめた。
さらに、飼料用米を餌として与えた豚を「やまと豚米らぶ」という名前でブランド化。肥育の最終段階で配合飼料に15%混ぜて60日間給餌すれば、肉質が良くなることもわかった。また、オレイン酸が増え、リノール酸が減るという研究結果が出ている。オレイン酸は血中の悪玉コレステロールを下げ、リノール酸は過剰に摂取すると善玉コレステロールを減らすとされている。一連の成果で畜産技術協会賞や食品産業技術功労賞を受賞した。そして、平成24年度には栄えある天皇杯を授与された。

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