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【吉村明のみつひかり栽培日誌】
中干し後の入水は幼穂形成を確認してから
- 三井化学アグロ(株) 営業本部マーケティング部ハイブリッドライス 種子グループ グループリーダー 吉村明
- 第6回 2014年06月26日
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2014年産の「みつひかり種子」の出荷が完了しました。昨年より2県減って38県での栽培(図1)となりますが、出荷量は1割増の約50t。播種量を3kg/10aで計算すると全国で約1650haとなります。種子出荷だけで状況を確認できていない生産者の方がまだ大勢いらっしゃいますが、今年度は情報収集にも力を入れていきたいと考えています。 栽培が最も多いのは6年連続の岐阜県で、その栽培面積は約300haです。第2位は取り組みが広がってきた埼玉県、以下、茨城県、愛知県、三重県の順となりました。最も普及が早く08年産では第1位だった岡山県は第6位でした。みつひかりの栽培適地ではありますが、栽培体系・米流通などの課題はまだ多くあります。 今年産から産地品種銘柄となった福島県では、(株)吉野家ファーム福島を中心に、13軒の新規生産者が栽培しています。また、宮城県・山形県では試験栽培が継続されます。これまで難しいと思われていた東北地方でのチャレンジ、果たしてどのような結果になるでしょうか? 期待と不安が交錯しています。
「みつひかり物語」(6)
【栽培面積の拡大へ】
「みつひかり」に限らず、民間品種の普及は各企業とも大変苦戦し、撤退、事業譲渡あるいは小規模な取り組みを継続しているに過ぎない状況です。そんななか、みつひかりの栽培がじわじわと増えてきた最大の理由は、「生産者と実需者との顔が見える関係を構築する」ことができたからだと考えています。
プロジェクト開始から4年目、一向に拡大を見せない従来型の普及から大規模生産者に直接働きかける対話型の普及に方針転換しました。愛知県の2軒の生産者に栽培をお願いしたところ、2時間の話し合いで、それまでの3年間で積み上げてきた800tの半量に当たる約400t分の栽培が決まりました。生産者に取り組みを紹介し、自らの責任と判断で栽培していただくことがこの品種の普及には大切なことだと感じた瞬間でした。
同年、農業ファイナンス事業を通じて大規模生産者との接点を持つ日立キャピタル(株)が、中部地区の生産者を対象に農業セミナーを開催しました。需要のあるお米として、みつひかりの栽培を紹介すると、このセミナーをきっかけに多くの大規模生産者に栽培していただけるようになりました。また、生産者同士の横の繋がりで栽培が拡大していく仕組みができ上がりました。
栽培技術も多くの生産者による栽培実績を元に解析し、大幅に改善しました。「生育期間が長いので遅くまで用水がこないと栽培できない」という認識から「花が咲き終わるまで水があれば十分」というように大きく変わり、関東・三重などの早場米地域にも広がりをみせることとなりました。
三重県では用水が盆過ぎ(8月20日頃)には止まってしまう地域があります。09年は8月以降、10月の刈り取りまで全く雨が降らず、品質低下が心配でした。(株)神明の製品受入検査において、胴割粒が増えることなく、こんな過酷な条件でも品質に与える影響は少ないことが確認できました。
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吉村明 ヨシムラアキラ
三井化学アグロ(株)
営業本部マーケティング部ハイブリッドライス 種子グループ グループリーダー
1962年生まれ。1988年 北海道大学大学院農学研究科修了。同年 三井東圧化学(株)(現三井化学)入社、農業資材開発に従事(北海道工業所勤務)。1996年 本社異動後、ハイブリッドライス事業開発を担当になる。2000年に事業ごと三井東圧農薬⑭(現三井化学アグロ)に異動し、現在に至る。17年間「みつひかり」をライフワークに、全国を飛び回る。
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