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【吉村明のみつひかり栽培日誌】
中干し後の入水は幼穂形成を確認してから
- 三井化学アグロ(株) 営業本部マーケティング部ハイブリッドライス 種子グループ グループリーダー 吉村明
- 第6回 2014年06月26日
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栽培のポイント(6)
速効性肥料を窒素で8kg/10a程度施用した田んぼに、栽植密度坪60株で植え付けた苗をできる限り浅水管理した場合、地域・気象条件によって違いはありますが、4月下旬移植では6月20日頃、5月中旬移植では7月5日頃、6月上旬移植では7月20日頃、6月下旬移植では8月5日頃には分げつが旺盛となっているはずです。この時期から中干しを開始します。
その後は「幼穂形成期に入るまで入水を我慢できるか」がポイントです。特に移植が早い場合は中干し期間が約1カ月と長くなります。
みつひかりは一般品種では伸びない6節以下が伸びる傾向にあります(図2)。中干し後の入水が早いと下位節を伸ばすだけで倒伏の危険が高まります。やや遅めの中干し開始で、中干し後の入水は幼穂形成を確認してから行なってください。
安定した多収栽培には、幼穂形成期からの入水・穂肥が不可欠です。入水の頃にはすでに6節以下の下位節が固まっていますので、籾数が一番増える幼穂1mmで穂肥を入れても一般品種のように倒伏しやすくなることはありません。みつひかりは出穂がバラつく稲でもあり、同一株内でも茎によって幼穂形成に幅があります。主穂は大きいので分げつの穂を大きくするため、主穂の幼穂が2~5mmの時に穂肥として窒素分で2~3kg/10a程度の一回施用を基本としています。より多収を狙う場合、穂数は少なくても収量を減らしたくない場合は主穂の幼穂が1mmの時に1回目、その7~10日後に2回目の穂肥を施用して一穂粒数を増やす、という方法もあります。
コシヒカリと同時期に移植すると、出穂は2週間ほど遅くなります。みつひかりの出穂時期の目安としてください。みつひかりはF1品種で特殊な採種方法をしており、純度が100%ではありません。稀に一般品種と同じ時期に出穂する個体がありますが、それに惑わされずに施肥と水管理をお願いします。
生産者インタビュー
「みつひかりは品質低下がないのが嬉しい」
みつひかり栽培3年目の岡山県S市の嘉数さん親子は1t獲りを目指して、移植(稚苗・みのる式成苗)、乾田直播(条播・点播・一粒点播)のさまざまな角度から栽培方法を探究している。岡山県では肥料卸を通じて早くから普及が始まっており、12~3年前からみつひかりは知っていた、とのこと。父の末弘さんは「当時から周囲の生産者がみつひかりを栽培しているのを眺めてました。というのも米評価が低く、一般米よりはるかに安い値段でしか流通しなかったんです。最近は一般B銘柄とほぼ同等で取引きされるようになったので、沢山獲れれば増収につながるとつくり始めました。みつひかりは刈取りが遅くなっても品質低下がないのが嬉しいですね。導入すれば面積拡大で心配することはありません」という。今年は18haのうち、7.4haがみつひかりに。息子の豪(いさむ)さんは、「今のところ移植が一番安定している。種子単価が高いのでコストを下げようといろいろと検討していますが、生産コストを考えると大したことはないです。収量増で十分にカバーできます」と話す。まだ手探り状態だが、今年も嘉数さん親子のチャレンジが続く。
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吉村明 ヨシムラアキラ
三井化学アグロ(株)
営業本部マーケティング部ハイブリッドライス 種子グループ グループリーダー
1962年生まれ。1988年 北海道大学大学院農学研究科修了。同年 三井東圧化学(株)(現三井化学)入社、農業資材開発に従事(北海道工業所勤務)。1996年 本社異動後、ハイブリッドライス事業開発を担当になる。2000年に事業ごと三井東圧農薬⑭(現三井化学アグロ)に異動し、現在に至る。17年間「みつひかり」をライフワークに、全国を飛び回る。
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