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【読み切り】
農協金融9月危機説は本当か!'96年・日本大冷害のシナリオ・狂牛病は対岸の火事か!?
- 編集部
- 1996年06月01日
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農協金融にもとうとう金融破綻の波が押し寄せる。では、危機を迎える信連とはいったいどこなのか? そこはどうなってしまうのか? そしてその危機とは、信連だけにとっての危機なのか?否。波はいずれ農林中金をも襲うことにもなりかねないのである。
「農協金融9月危機説」。最近、経済雑誌でこんなタイトルの記事をよく目にする。9月になると、農協が各地でハタハタと倒産するという意味に受け取られがちだが、これは間違いである。
正しくは9月中間決算段階で債務超過に陥るか、あるいは資本割れを起こす都道府県信連が続出するということである。債務超過に陥れば、出資金を取り崩しても負債は払えなくなる。資本割れを起こせば、単協へ出資金の返済に支障をきたす。いずれも経営上由々しき事態を招くことには変わりない。
政府が国会に提出した「住専関係等資料」によれば、実質的に債務超過に陥っているのは、宮城、埼玉、栃木の3県信連である。いずれもバブル末期に証券会社の甘言に誘われて、十分な研究もせずに組合員農家の資金を有価証券投資に向けて多額の損失を出しだのが、命取りになったものである。
この3県信連は今年中に清算されて農林中金に統合される予定である。単協が払い込んだ出資金は、農林中金にそのまま受け継がれ、中金が債務超過分を全額カバーすることになる。単協が信連へ払い込んだ出資金には影響がなく、むろんこれによって単協の経営に重大な影響を与えることはなさそうだ。
問題は、資本割れを起こしたり、債務超過に陥る信連が、この3県だけではないということである。次頁の表を見ていただきたい。
この表は、住専処理に伴う実質的な損失(系統協力金)を負担した後、ノンバンク整理などで新たな損失が発生した場合、信連はどれだけ損失に耐えられるかを計算したものである。この数字を「剰余金残余額」という。表は上から経営状態のよい信連順に並んでいると読んで頂きたい。
3県信連に次いで”レッドカード”が出ているのは、青森県信連である。住専処理に伴う損失負担をした後は、わずか 19億円しか残らない。貸出先のノンバンク整理に伴う新たな損失が発生すれば、資本割れか債務超過に陥ることは必至である。その剰余金残余額から、山梨、大分、秋田、鳥取、長崎、山形、鹿児島の各県信連も、今決算で同じような事態に陥るのではないかという見方である。
金融関係者によれば、信連が厳しい金融戦争に勝ち残っていく上で、最低300億円以上の剰余金残余額が必要だという。それでいけば、金融戦争にかろうじて生き残れるのは、兵庫、愛知、長野、北海道、大阪、広島、神奈川、静岡の8信連ぐらいだろうか。ただし静岡は、今回の住専向けの損失でも全国卜ップの226億円とを負担した。バブル期には超積極経営を展開していたこの信連は、怪しげなノンバンク向け融資がまだまだあるという。ノンバンク整理が本格化すれば、新たな損失負担が増え、順位がケーンと下がることも予想されるのだ。
ところで信連が次々と偵務超過に陥った場合のことである。農水省は、信連の債務超過相当分については農林中金に肩代わり負担させる方針を決めているようである。つまり破綻信連は、農林中金から債務超過相当分の資金贈与を受けて清算されることになるのだ。農林中金が農協版”東京共同銀行”になるのだ。
しかし農林中金の体力にも限りがある。破綻信連の数が10になり、やがて20 から30にもなると、今度は農林中金がパンクしかねない。今度は農林中金が危機的状況に見舞われることが考えられる。そんな非常事態が、4~5年後にやってくるかも知れないのだ。
農協金融 9月危機説は本当か!
「農協金融9月危機説」。最近、経済雑誌でこんなタイトルの記事をよく目にする。9月になると、農協が各地でハタハタと倒産するという意味に受け取られがちだが、これは間違いである。
正しくは9月中間決算段階で債務超過に陥るか、あるいは資本割れを起こす都道府県信連が続出するということである。債務超過に陥れば、出資金を取り崩しても負債は払えなくなる。資本割れを起こせば、単協へ出資金の返済に支障をきたす。いずれも経営上由々しき事態を招くことには変わりない。
政府が国会に提出した「住専関係等資料」によれば、実質的に債務超過に陥っているのは、宮城、埼玉、栃木の3県信連である。いずれもバブル末期に証券会社の甘言に誘われて、十分な研究もせずに組合員農家の資金を有価証券投資に向けて多額の損失を出しだのが、命取りになったものである。
この3県信連は今年中に清算されて農林中金に統合される予定である。単協が払い込んだ出資金は、農林中金にそのまま受け継がれ、中金が債務超過分を全額カバーすることになる。単協が信連へ払い込んだ出資金には影響がなく、むろんこれによって単協の経営に重大な影響を与えることはなさそうだ。
問題は、資本割れを起こしたり、債務超過に陥る信連が、この3県だけではないということである。次頁の表を見ていただきたい。
この表は、住専処理に伴う実質的な損失(系統協力金)を負担した後、ノンバンク整理などで新たな損失が発生した場合、信連はどれだけ損失に耐えられるかを計算したものである。この数字を「剰余金残余額」という。表は上から経営状態のよい信連順に並んでいると読んで頂きたい。
3県信連に次いで”レッドカード”が出ているのは、青森県信連である。住専処理に伴う損失負担をした後は、わずか 19億円しか残らない。貸出先のノンバンク整理に伴う新たな損失が発生すれば、資本割れか債務超過に陥ることは必至である。その剰余金残余額から、山梨、大分、秋田、鳥取、長崎、山形、鹿児島の各県信連も、今決算で同じような事態に陥るのではないかという見方である。
金融関係者によれば、信連が厳しい金融戦争に勝ち残っていく上で、最低300億円以上の剰余金残余額が必要だという。それでいけば、金融戦争にかろうじて生き残れるのは、兵庫、愛知、長野、北海道、大阪、広島、神奈川、静岡の8信連ぐらいだろうか。ただし静岡は、今回の住専向けの損失でも全国卜ップの226億円とを負担した。バブル期には超積極経営を展開していたこの信連は、怪しげなノンバンク向け融資がまだまだあるという。ノンバンク整理が本格化すれば、新たな損失負担が増え、順位がケーンと下がることも予想されるのだ。
ところで信連が次々と偵務超過に陥った場合のことである。農水省は、信連の債務超過相当分については農林中金に肩代わり負担させる方針を決めているようである。つまり破綻信連は、農林中金から債務超過相当分の資金贈与を受けて清算されることになるのだ。農林中金が農協版”東京共同銀行”になるのだ。
しかし農林中金の体力にも限りがある。破綻信連の数が10になり、やがて20 から30にもなると、今度は農林中金がパンクしかねない。今度は農林中金が危機的状況に見舞われることが考えられる。そんな非常事態が、4~5年後にやってくるかも知れないのだ。
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