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編集長インタビュー

互いにありがとうと言い合える「お客さん」との店づくり

安井浩和氏は、東京都新宿区の早稲田商店街で「こだわり商店」という小売店を営んでいる。産地直送の農産物をはじめ、肉や魚、インスタント食品に至るまで扱う商品にはこだわりがある。そのこだわりは、お店のお客さんに喜んでもらいたいという考えに基づいている。この安井氏の商売人としての考え方は農業経営者も学ぶべき点があるのではないだろうか。 (まとめ/平井ゆか)
他とは異なる、こだわりの
スーパーマーケットへの転換

昆吉則(本誌編集長) 安井さんは、産地直送の農産物を扱い、こだわりのある小売店を展開されていますね。まず、安井さんが小売業を営んでいる理由を教えてください。
安井浩和((株)稲毛屋代表取締役) それにはまず、僕自身のことから話したいと思います。僕は早稲田の街で育ちました。祖父は肉屋を営み、昭和50年ごろから父がスーパーマーケットに変えました。僕は、子供のときからずっとお店の仕事を手伝ってきました。小学校3~4年のころには、年末に「在庫を売り切ったらお年玉を値上げするぞ」と言われて子供ながらに頑張ったのを覚えています。もっと売るにはどうしたらいいかと考えたりして。売れたときはすごく感動しましたね。
そのとき、頑張れた一番の原動力は、「ありがとね」というお客さんの言葉です。その声がたまらないわけですよ。その感動が忘れられなくて、今、この商売をやっているわけなんです。
昆 お父様がやっていたスーパーマーケットをやめて、この場所に移り、小さい小売店を始めたのはなぜですか。
安井 スーパーマーケットは、どこも同じようなお店で、どこも同じようなものを売っていて、値段の差は、2円、3円、大きくても10円、20円の世界ですから、資本力のあるところに負けるとわかっていました。それに、僕は、自分が食べたものしかお店に置きたくなかったんですが、そういうわけにもいきません。
あるとき、差別化のために、業界で言うところのC判定のものを仕入れて売ってみようと思ったんです。スーパーで扱う商品は売れ筋順でA、B、Cのランク付けがされています。C判定のカップラーメンを片っ端から食べてみて自分がおいしいと思ったものを見つけたので仕入れてみました。自分がおいしいと思ったものですから売り込みまくりました。初めは売れなかったんですが、人気が出て、売れ始めた翌月には終売(出荷停止)になっちゃったんです。Cランクの商品は結局、全国的には売れないことに変わりはなかったんです。でもそれは、お客さんを裏切ることになり、ショックでした。
昆 POSシステムの弊害ですよね。
安井 他のC判定のヨーグルトやお菓子なども仕入れてみましたが、どれもすぐに終売になってしまうんです。そんなことが続き、僕にはスーパーマーケットはやり切れないなと思っていました。父から「3店舗のスーパーマーケットと7~8軒のテナントを継ぐか?」と聞かれたとき、全部やめて独立させてくれと言いました。裏通りで、1人でやりたいと。それで、全国2、30カ所の産地を見て回り、この形で商売することにしました。

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