記事閲覧
ここ2~3年の間、うちの周り半径500m~1kmぐらいにコンビニエンスストアを含めて2、30軒ができたんですが、みんな同じなんですよね。いっそ、み~んなイオンやセブン‐イレブンになればいい。そうしたら異物のように僕らが目立ちますから。目立つってことは、僕は大事だと思っています。今まで知らなかったお店でも、入ってもらって、話をすればわかってもらえる。そんなお店にしたいと思っています。
昆 僕は、お店はメディアだと考えています。ものとしての野菜とかお米を売っているけど、実は売れている理由は、安井さんの思いと生産者の背景にある風土や文化、あるいは彼らの生き方だとか、そういうものにお客さんは共感しているのではないでしょうか。
安井 事業でいうと、値段のつけ方はよく話題になります。前の店で100円で売っていたものは150円を超えると付加価値が必要になります。たとえば、今の季節しかなくて希少品種であること、その生産者がどういう思いで作っているかということはプラスになります。ですが、あまり言い過ぎると、お客さんは窮屈になるんですよ。思いを感じて買う行動は持続しません。
昆 押しつけになってしまうということですかね。
安井 そうです。そこはちょっと弱めておくことが必要だと思います。
昆 お客さんの満足が一番大切ですからね。
安井 大事なのは、ここのお店で買っていたのに他で安売りしているからそこで買ったという人ががっかりするぐらいの味の差です。他で買った味噌で作った味噌汁を飲んだ旦那さんから「『お前、変えただろ。前のほうがうまいぞ』って言われた」という奥さんがいました。それが一番うれしいほめ言葉です。それが僕たちの強みです。久松さん(『キレイゴトぬきの農業論』の著者・久松達央氏の野菜は安井氏の定番商品の一つ)の言うように、野菜のおいしさは旬で、鮮度感があって、品種がいいっていうこの3つがおいしさを決めると思います。あとは地域性もあると思いますが。
昆 こういうお店は、すべての人をお客さんにする必要なんかないですよね。
安井 僕は、仕入れるときに3人のお客さんを思い浮かべられるかをポイントにしています。あの人とこの人が買ってくれれば、その後ろには5~10人のお客さんがいる。1ロット30個だから売れるなと。
昆 今、おっしゃっていることは、商品を考えるとき、全員のための話をしている限り答えは出せない。自分のお客さんはこの人たちなんだってイメージできるかどうかですね。
会員の方はここからログイン
安井浩和 ヤスイヒロカズ
(株)稲毛屋
代表取締役
1978年、東京都生まれ。東京・早稲田で生まれ育ち、3歳から父の経営するスーパーマーケットを手伝う。明治大学商学部に通う傍ら、18歳で店長になる。父(安井潤一郎)が2005年に衆議院議員(小泉チルドレン)に当選したことをきっかけに同年から経営全体を任される。07年、テナントを含め8店舗すべてを閉店し、独立。同年10月、こだわり商店をオープンさせる。添加物を極力使用していない商品をコンセプトに、現在は全国36地域の商品1,200アイテムを取り扱う。一方、早稲田・高田馬場をはじめ、現在は全国11カ所以上に広がる地域通貨「アトム通貨実行委員会」の本部役員も務める。早稲田商店会の企画運営として修学旅行生による地元産品PR販売を企画し、年間1,000人以上の学生を受け入れて商店街活性化につなげている。
編集長インタビュー
ランキング
WHAT'S NEW
- 有料会員申し込み受付終了のお知らせ
- (2024/03/05)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2023/07/26)
- 年末年始休業のお知らせ
- (2022/12/23)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2022/07/28)
- 夏期休業期間のお知らせ
- (2021/08/10)