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実践講座:したたかな農業を目指す経営管理 入るを計り出を制す!

勘定其ノ三 農産物の付加価値アップに必要な勘定とは

食品加工などの第二次産業、流通・販売などの第三次産業にも農業者が関わることによって、これまで第二次・第三次産業の事業者が得ていた付加価値を農業者自身が得る取り組みを、昨今「六次産業化」というようだ。「大変身を遂げたスーパー農業経営者」「仲間と共に開発した農産加工品が大ヒット」「その増産に成功し、あらゆる販売手段が功を奏して、町には賑わいが戻った」――羨ましい限りで、全国にはこのような成功例が少なくない。お手本となる地域振興にまで至った六次産業化のビジネスモデルは、皆さんもご存じの通り実在するのである。
しかし、私自身は、経営がこのような形態に変化することはとても高いハードルであるし、その利益が如何ほどで、身を粉にして奔走した経営者の取り分は果たして増えたのかと、どうしても考えてしまう。
我が家にも小さいながら、古納屋を改造した加工場と飲食室がある。製作した目的は単純で、自家農産物の貯蔵と加工、来客との交流スペースの確保である。それ以上でもそれ以下でもない。今年中にはいくつかの農産加工場と飲食店の許可申請をしてみたいとは考えているが、お金儲けをしようとはまったく思っていない。来訪者に時折「六次産業化ですか?」と訪ねられるが、「ただの趣味です」と答えている。 
農場単位で考えても、加工品をつくっただけでビジネス化できる事例は稀である。レストランも同様であろう。農産物を生産するのにコツがあるように、農産物を加工して儲けるのもまたコツが必要なのだ。そして努力では如何ともしがたい、商売人のセンスが必要不可欠である。

王道は食品業界のプロとの提携

表1に主な農畜産物の商品(消費される形態となった物材)と、原材料(農畜産物の一般的売価)の売価を示した。おにぎりはおよそ10倍以上の付加価値が生まれたことになる。他の原材料と製造するためのコストがかかっているから、実際のお米の単価とは単純に比較はできないが、最終消費の商品になると、原料が何倍にも価値を増し、利益を生み出していることに気づかされる。
我が国における食品産業の国内生産額は、減少傾向で約80兆円程度である。この産業を支える就業者数は約800万人といわれる。その中で経営者として成功している人は何人いるのか見当もつかないが、基幹的農業従事者数の170万人に比べればはるかに多い競争相手と、80兆円の牌を取り合っていることは明らかである。間違っても「六次産業化」の言葉に踊らされてはいけない。
では、これらを踏まえて、農産加工のあり方について考えてみよう。私が国産米のみを原料に使用している某冷凍食品メーカーにお邪魔したとき、設備や、コメ以外の原材料、販売流通形態などを勉強させていただいた。製造・販売・流通のノウハウなど並々ならぬ努力とコストを削減した経営努力によって商品が生み出されていることは、素人の私でもすぐに理解できた。
一方で、個人・集団を問わず農産加工を行なう農業経営にも、沢山お邪魔をしてきたが、どの農場でも「農家らしさ」と「生産へのこだわり」を付加価値につなげていた。漬物や味噌、トマトジュース、ソースなどに工夫を凝らし、商品の形態も多種多様である。売価も大量生産の市販品の2~5倍で、こだわりと農場やその人々への愛着を理解できるお客様向けである。原材料に新たな価値を見出し、儲けの出る商品化をしている。

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