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読み切り

農協金融9月危機説は本当か!'96年・日本大冷害のシナリオ・狂牛病は対岸の火事か!?

 新食糧法は、凶作でも豊作でも、安定した価格で消費者に米を届けるのが目的のひとつである。そう考えると、凶作でも米価が上がらないなら、消費者の信任が高まり、長期的には農家にとってもメリットがある。

 生産・流通がどんな条件にさらされても、消費の現場にはその混乱を持ち込まないし農業経営者には、そういう努力も求められているような気がする。


作凶予測情報の充実で急騰はなくなった。冷害はむしろ輸入へのシフトを招く危険
東京青果株式会社営業管理部企画情報課課長・工藤徹男氏



海外産地にスキを与えるな

 東北・北海道ではたしかに播種、生長が遅れています。もし実際に東北・北海道で冷害ということが起これば、市場では夏秋野菜の品薄という形で影響が出ることになります。

 一昨年は夏秋野菜産地である東北・北海道が冷夏で、その大消費地である関東が猛暑という最悪のパターンでした。それでスイカが品薄になってたいへんだったわけですが、それに似た状況にならないとも限らない。ただし、その時も価格は以前に較べて比較的安定していました。どいうのも、最近は予測情報が非常に早くなってきているからです。ものによっては高騰もなくはないですが、昔のような急騰のしかたというのはない。そういった変化はおさえておいてほしいものです。

 それよりも、こうした問題を単に気象の問題として考えていては、本当に有効な経営を見出すことは難しいのではないでしょうか。

 現在のわが国の野菜生産・流通が、たいへんな「遠隔地依存型」になっているという点を、まずよく考えてみてください。市場に入ってくる野菜を時系列に沿って見ると、まず冬春野菜として西南暖地の主として施設野菜、春の関東、夏秋野菜として東北・北海道の露地野菜という順番、棲み分けがあります。そしてそれらの実に45%を東京圏で消費している。ということは、なにかあった場合の代替産地がないということです。夏秋野菜はとくに代替産地が少ない。これは主産地形成の功罪の罪の部分です。事故があった場合に一発でやられてしまう。やられるということは、海外産地につけいられるスキを作ってしまうということです。

 いまの消費者の間には、なんにつけても「なくなってもなにかで充当できる」というムードが蔓延しています。国産野菜が高ければ誰かが海外から調達してくるだろうとか、米が凶作になれば輸入が効くはずだといった考え方が定着してしまっている。その結果93年には海外から米を大量に集めておいて、その上でそれが「まずい」と文句を言って、結局北朝鮮へたらい回しにしてしまった。われわれにしてみれば、ちょっと理解しがたい動きで、少しは作る努力に報いる態度なり考え方を持つてもらいたいと思う。しかし実態はそうなのだということは、農業経営者も理解しておくべきです。

 いまいちばん問題なのは、レンコン、ゴボウ、サトイモといった根菜類の輸入が始まっている点です。これらは国内では最も産地が減っている種類のものですが、一方、絶対的な消費量こそ少ないにせよ、最も日本食らしい食材、減ったとしてもなくなっては困る種類の食材なわけです。ところがこれらは産地が集約していて、輸入業者にしてみれば作凶情報がとりやすいものでもある。国産野菜の急所であったわけです。またネショウガ、ニンニクなども恐い。これらはもの自体が安く、関税も低い。しかも消費者にしてみれば、なにも特別に高いものである必要はないだけに、これはもっていかれやすい。

 そして、こういうものは、常に、一旦輸入されたら、一回では済まないのだ、ということを肝に銘じておくべきです。

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