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安定出荷が国産を優位に
従来主産地形成をしたところ、市場を独占していたところというのは、一般的にいま危機を迎えています。というのは、これまで販売拡大の努力が足りなかったし、後からくる敵に対しての対応が遅かったからです。個々の産地と品目は、これから変わらざるを得ないでしょう。そして、変わる部分に早めに対応していかなくてはだめです。
ところが多くの産地では、販売戦略の問題を抜きに、相変わらず増産によって増収を狙うという考え方から脱却できていない。たとえば、東北・北海道ではいま、出荷期間を長くしようという動きがあります。しかし、あまり長くしても気候の適性や後作をどうするかといった問題が浮上してくるでしょう。それに、そうした方向性が本当に収益をもたらすものなのかどうか。
たとえば、いまは1月くらいにニュージーランド産のトウモロコシが入ってきます。けれども、「果たしてそれをみんな本当に食うのか?」という問題は後回しにされている。昔からの流れでいくと、5月~6月頃、甲州方面から早生が出回り始めて、夏も終わりになって岩手から出荷する頃には消費が減って値が上がりようがないという時期になっている。作れば売れるというわけではないのです。
一方、量販店の海外からの野菜の輸入、開発輸入はなぜ進むのかを考えてみてください。それは単に価格だけではないはずです。海外産地はこれまでも自由経済にさらされてきた所ですから、”契約”という観念が非常によく浸透している。ということは、約束した量を必ず確保しようという努力があるわけです。
それに対してわれわれ市場には、品物の多い少ないに柔軟に対応できるような、市場の考え方とやり方があります。しかし、やっぱり、「市場だから持っていってもいかなくてもいい」とはいきません。一流産地でも約束を守ってくれる努力のない所は、やはりわれわれにしても疑問を抱かざるを得ない。
これから量販店が産直をもっと進めるなど、流通が変わる気配はありますが、肝心の産地がそのようでは、結局輸入依存型を進めてしまうだけではないですか。産直に取り組むにせよ、市場出荷するにせよ、機動力のある産地をめざさない限り、勝ち残るのは難しいというのが現実なんです。(インタビュー/斎藤訓之)
イギリスで爆発的に広がり。ヨーロッパのみならず世界中を震憾させるに至った狂牛病の原因は、その飼料にあると考えられている。そしてそれが事実であれば、わが国の畜産業も、「うちは安全」と胸を張っていることはできない。
発生国は英国だけではない
イギリスで発生した狂牛病は、ヨーロッパのみならず、日本にも大きな影響を及ぼしてきている。狂牛病は、正式にはBSE(ウシ海綿状脳症)といい、牛の脳がスポンジ状になる奇病である。この病気に感染し発病した牛は歩行がおぼっかなくなり、その後死に至る。イギリスでは、現在政府がその解決に全力を注いでいる。
従来主産地形成をしたところ、市場を独占していたところというのは、一般的にいま危機を迎えています。というのは、これまで販売拡大の努力が足りなかったし、後からくる敵に対しての対応が遅かったからです。個々の産地と品目は、これから変わらざるを得ないでしょう。そして、変わる部分に早めに対応していかなくてはだめです。
ところが多くの産地では、販売戦略の問題を抜きに、相変わらず増産によって増収を狙うという考え方から脱却できていない。たとえば、東北・北海道ではいま、出荷期間を長くしようという動きがあります。しかし、あまり長くしても気候の適性や後作をどうするかといった問題が浮上してくるでしょう。それに、そうした方向性が本当に収益をもたらすものなのかどうか。
たとえば、いまは1月くらいにニュージーランド産のトウモロコシが入ってきます。けれども、「果たしてそれをみんな本当に食うのか?」という問題は後回しにされている。昔からの流れでいくと、5月~6月頃、甲州方面から早生が出回り始めて、夏も終わりになって岩手から出荷する頃には消費が減って値が上がりようがないという時期になっている。作れば売れるというわけではないのです。
一方、量販店の海外からの野菜の輸入、開発輸入はなぜ進むのかを考えてみてください。それは単に価格だけではないはずです。海外産地はこれまでも自由経済にさらされてきた所ですから、”契約”という観念が非常によく浸透している。ということは、約束した量を必ず確保しようという努力があるわけです。
それに対してわれわれ市場には、品物の多い少ないに柔軟に対応できるような、市場の考え方とやり方があります。しかし、やっぱり、「市場だから持っていってもいかなくてもいい」とはいきません。一流産地でも約束を守ってくれる努力のない所は、やはりわれわれにしても疑問を抱かざるを得ない。
これから量販店が産直をもっと進めるなど、流通が変わる気配はありますが、肝心の産地がそのようでは、結局輸入依存型を進めてしまうだけではないですか。産直に取り組むにせよ、市場出荷するにせよ、機動力のある産地をめざさない限り、勝ち残るのは難しいというのが現実なんです。(インタビュー/斎藤訓之)
狂牛病は対岸の火事か!?
イギリスで爆発的に広がり。ヨーロッパのみならず世界中を震憾させるに至った狂牛病の原因は、その飼料にあると考えられている。そしてそれが事実であれば、わが国の畜産業も、「うちは安全」と胸を張っていることはできない。
発生国は英国だけではない
イギリスで発生した狂牛病は、ヨーロッパのみならず、日本にも大きな影響を及ぼしてきている。狂牛病は、正式にはBSE(ウシ海綿状脳症)といい、牛の脳がスポンジ状になる奇病である。この病気に感染し発病した牛は歩行がおぼっかなくなり、その後死に至る。イギリスでは、現在政府がその解決に全力を注いでいる。
イギリスにおいて最初にBSEが発生したのは1989年で、当時はさほど大きな問題にはならなかった。だが今回の問題は長期化の様相を呈している。
イギリスにおけるBSEの発生数は1 989年の7100頭を皮切りに、その後90年1万4000頭、91年2万500 0頭、92年3万6000頭、94年2万3000頭と変化している(次頁表土。その後沈静化するように見えたBSEであったが、いまやイギリスは400万頭の牛の処分を迫られるという事態にまで追い込まれている。 イギリス政府の発表後、3月20日、英農業大臣の諮問機関であるBSE専門家委員会は、BSEとクロイツフェルトヤコブ病(CJD、人間の脳が海綿状になり、アルツハイマー型痴呆症に似た症状を起こしい死に至る)の間には、直接的な証拠はないものの、89年のBSE感染部位の使用禁止以前の感染牛との接触がCJDの発病と関連がある可能性が高いと発表した。ただし牛乳については安全性を確認している。
これを受けてEUは、ドイツ、フランス、イタリアなどEU12ヵ国(アイルランド、デンマークを除く)の欧州委員会を3月25日から27日にかけて行なうなどの対応をしている。3月25日、EUの常設獣医委員会は、イギリス産牛肉及びそれを原料とする製品のEU加盟国及び第三国に対する輸出禁止の勧告を決定した。27日、欧州委員会はBSEに対する暫定措置として、イギリスからEU加盟国及び第三国に対しての次の商品の輸出を禁止した。すなわち、生体牛、牛の精液、胎児、イギリスにおいて屠畜された牛の肉及び関連加工品、動物飼料、人間の関与する食物連鎖に入る可能性のあるもの、衣料品、化粧品、医薬品に使用される牛を原料とした製品である。
ここで「動物飼料」というものが取り上げられているが、これはBSE発生源がどのように考えられているかという問題と直接かかわりがある。つまりBSEの発生源は従来から知られているスクレイピー(羊の脳が海綿状になり死亡する病気)に侵された羊であって、そのミートホーンミール(脳、骨などから作られる動物飼料)を食べた牛がBSEを発病し、さらに牛同士で感染したと考えられているのである。したがって、BSEを防ぐ手だてとしては、感染源と思われる羊のミートホーンミールを牛に与えないということが重要なことである。
これに次いで、4月1日~3日にEU緊急農相理事会がルクセンブルグで開かれた。ここでは、屠畜時に30ヵ月齢以上のイギリス産牛を食用及び飼料用のルートから排除するという決定がなされ、同様に、化粧品、薬品の原料としての利用も禁止した。これは羊を発生源とするBSEが考えられるように、人類の食物連鎖からそうした危険の可能性を隔離するという目的がある。その考え方により、家畜飼料として哺乳類に関するものを配合飼料にする場合は、基準及び表示規則を強化する一方、さらに哺乳類の肉及び骨粉を牛などの反物動物の飼料を通して利用することを禁止した。
BSE感染牛の処分に対する費用の問題では、イギリス政府は30ヵ月齢以上の牛の屠畜を行ない、その屠畜に要する費用はイギリス政府が負担し、農家への補償費用のうち70%をEUが負担、残りをイギリス政府が負担するという決定をした。これによって、EUの負担額は年間で3億2000万EQ(約430億円)になる。なお、BSEはイギリス以外でも発生しているが、他のEU諸国がBSE対策を講じる際も、同様にEUが負担する。
イギリス政府は4月末までに、BSEに感染した疑いの強い家畜の選別的破棄処分計画を欧州委員会に提出することになった。欧州委員会は、暫定的な措置として4月中に5万tの牛肉の買い入れを行なう。これはすなわち、今回イギリスを中心としたBSEの発生による経済的損失を少しでもカバーするという措置である。
また欧州委員会は、イギリスと協力してBSE対策専門家グループを設置した。イギリスでは衛生監視所が強化され、農場の監視、牛の登録を行なう。イギリスは、2週間ごとにこれらの状況を欧州委員会に報告することになった。
イギリスにおけるBSEの発生数は1 989年の7100頭を皮切りに、その後90年1万4000頭、91年2万500 0頭、92年3万6000頭、94年2万3000頭と変化している(次頁表土。その後沈静化するように見えたBSEであったが、いまやイギリスは400万頭の牛の処分を迫られるという事態にまで追い込まれている。 イギリス政府の発表後、3月20日、英農業大臣の諮問機関であるBSE専門家委員会は、BSEとクロイツフェルトヤコブ病(CJD、人間の脳が海綿状になり、アルツハイマー型痴呆症に似た症状を起こしい死に至る)の間には、直接的な証拠はないものの、89年のBSE感染部位の使用禁止以前の感染牛との接触がCJDの発病と関連がある可能性が高いと発表した。ただし牛乳については安全性を確認している。
これを受けてEUは、ドイツ、フランス、イタリアなどEU12ヵ国(アイルランド、デンマークを除く)の欧州委員会を3月25日から27日にかけて行なうなどの対応をしている。3月25日、EUの常設獣医委員会は、イギリス産牛肉及びそれを原料とする製品のEU加盟国及び第三国に対する輸出禁止の勧告を決定した。27日、欧州委員会はBSEに対する暫定措置として、イギリスからEU加盟国及び第三国に対しての次の商品の輸出を禁止した。すなわち、生体牛、牛の精液、胎児、イギリスにおいて屠畜された牛の肉及び関連加工品、動物飼料、人間の関与する食物連鎖に入る可能性のあるもの、衣料品、化粧品、医薬品に使用される牛を原料とした製品である。
ここで「動物飼料」というものが取り上げられているが、これはBSE発生源がどのように考えられているかという問題と直接かかわりがある。つまりBSEの発生源は従来から知られているスクレイピー(羊の脳が海綿状になり死亡する病気)に侵された羊であって、そのミートホーンミール(脳、骨などから作られる動物飼料)を食べた牛がBSEを発病し、さらに牛同士で感染したと考えられているのである。したがって、BSEを防ぐ手だてとしては、感染源と思われる羊のミートホーンミールを牛に与えないということが重要なことである。
これに次いで、4月1日~3日にEU緊急農相理事会がルクセンブルグで開かれた。ここでは、屠畜時に30ヵ月齢以上のイギリス産牛を食用及び飼料用のルートから排除するという決定がなされ、同様に、化粧品、薬品の原料としての利用も禁止した。これは羊を発生源とするBSEが考えられるように、人類の食物連鎖からそうした危険の可能性を隔離するという目的がある。その考え方により、家畜飼料として哺乳類に関するものを配合飼料にする場合は、基準及び表示規則を強化する一方、さらに哺乳類の肉及び骨粉を牛などの反物動物の飼料を通して利用することを禁止した。
BSE感染牛の処分に対する費用の問題では、イギリス政府は30ヵ月齢以上の牛の屠畜を行ない、その屠畜に要する費用はイギリス政府が負担し、農家への補償費用のうち70%をEUが負担、残りをイギリス政府が負担するという決定をした。これによって、EUの負担額は年間で3億2000万EQ(約430億円)になる。なお、BSEはイギリス以外でも発生しているが、他のEU諸国がBSE対策を講じる際も、同様にEUが負担する。
イギリス政府は4月末までに、BSEに感染した疑いの強い家畜の選別的破棄処分計画を欧州委員会に提出することになった。欧州委員会は、暫定的な措置として4月中に5万tの牛肉の買い入れを行なう。これはすなわち、今回イギリスを中心としたBSEの発生による経済的損失を少しでもカバーするという措置である。
また欧州委員会は、イギリスと協力してBSE対策専門家グループを設置した。イギリスでは衛生監視所が強化され、農場の監視、牛の登録を行なう。イギリスは、2週間ごとにこれらの状況を欧州委員会に報告することになった。
しかし、イギリスはこのような欧州委員会の決定に対して非常な反発を示している。3月27日にEUで決定されたイギリス産牛肉、牛関連商品の輸出禁止措置の早急な解除を要求している。しかしEUはこれに同意せず、結論は6週間ごとに開催されるEU常設の獣医委員会の検討に委ねられることになっている。
というのも、BSEは実はイギリスだけではなくフランスをはじめ他のヨーロッパ各国でも発生しているのである。その発生頭数は、いちばん多いイギリスが 14万4792頭、アイルランド99頭、フランス11頭、スイス118頭、ポルトガル33頭、カナダー頭、ドイツ4頭、イタリア2頭などとなっている。このように、頭数に違いこそあれ、BSEはヨーロッパのほとんどの国で発生しており、また日本への牛肉輸出が認められているカナダにおいても発生が報告されているのである(表2)。
イギリスはBSEに対し、メージャー首相以下非常に真剣に取り組んでいる。たとえば、EUの決定した輸出禁止措置は不当であるとして、4月16日欧州裁判所へ提訴することを決めた。ホッグ農業大臣は、BSEの追加措置として96年総額9億3000万ポンドを出資し、97年以降は毎年5億5000万ポンドを出資するというように、経済対策を打ち出している。97年以降の毎年5億5000万ポンドの中身は、30ヵ月齢以上の牛の処分に割り当てられる。
また8000万ポンドを限度として、30ヵ月齢以上の高級牛の処分に対しては、1億1000万ポンドを支出する。1億1800万ポンドを精肉工場に支出する。また、生産者段階では、家畜登録制度の導入を決定した。今年6月以降施工される。イギリス議会に農業用(肥料を含む)哺乳動物の肉及び骨粉を使用することを決める法案が提出された。
一方、WHOはBSEに関する専門家会議による提言を行なっている。伝達性海綿状脳症(TSE)の症状を呈している動物の部分を食物連鎖から排除するために、TSEに感染した動物の屠畜処理をすべての国が確実に実施することを提言した。また、BSEの監視体制、強制的届出制度の確立を提言した。
さらに、BSEの発生国はBSE感染体が含まれる疑いのある特定の組織を食物連鎖から排除しなければならないことも提言し、反制動物の組織を反制動物の飼料として使用することも禁止した。
医薬品については、BSE因子を伝達する危険性を最小限度にする措置が有効であり、医薬品の原料については監視が実施されているBSE未発生国、あるいは散発的発生国のもののみ使用すると提言した。
原因は牛を喰った牛だった!
さて、欧州のこのような事態・措置を受けての、日本の農水省、厚生省の対応は次のとおりである。厚生省は、すべてのイギリス産牛肉加工品などの輸入を自粛するよう業者に要請した。農水省は飼料やぺ。トフードなどの牛肉加工品についても輸入を禁止し、北アイルランド産の牛肉も新たに輸入禁止の対象とした。
ところで、BSEの日本の農業の現場との関連だが、いくつかを挙げることができる。まず、日本でのBSEによる牛の死亡例はないとしても、羊のスクレイピーによる死亡例は報告されていることは見逃せない。これまでに100頭以上の羊がスクレイピーによって死亡しているのである。したがって、日本国内でBSEが発生しないという保証はどこにもないのである。
BSEの要因についてはいろいろ言われている。現在、BSEの原因としてイギリスをはじめとする多くの国の学者によって学説として有力視されているのは、プリオンと呼ばれる細胞のタンパク質の変化である。プリオン自体はウイルスでも細菌でもなく、動物自身の遺伝子によって作られ、神経の伝達にかかわっていると考えられている物質である。そのプリオンの異常を起こしたものが脳神経を破壊し、それがスクレイピー、BSE、TSEと呼ばれる病気(プリオン病と総称される)となると考えられているのである。
というのも、BSEは実はイギリスだけではなくフランスをはじめ他のヨーロッパ各国でも発生しているのである。その発生頭数は、いちばん多いイギリスが 14万4792頭、アイルランド99頭、フランス11頭、スイス118頭、ポルトガル33頭、カナダー頭、ドイツ4頭、イタリア2頭などとなっている。このように、頭数に違いこそあれ、BSEはヨーロッパのほとんどの国で発生しており、また日本への牛肉輸出が認められているカナダにおいても発生が報告されているのである(表2)。
イギリスはBSEに対し、メージャー首相以下非常に真剣に取り組んでいる。たとえば、EUの決定した輸出禁止措置は不当であるとして、4月16日欧州裁判所へ提訴することを決めた。ホッグ農業大臣は、BSEの追加措置として96年総額9億3000万ポンドを出資し、97年以降は毎年5億5000万ポンドを出資するというように、経済対策を打ち出している。97年以降の毎年5億5000万ポンドの中身は、30ヵ月齢以上の牛の処分に割り当てられる。
また8000万ポンドを限度として、30ヵ月齢以上の高級牛の処分に対しては、1億1000万ポンドを支出する。1億1800万ポンドを精肉工場に支出する。また、生産者段階では、家畜登録制度の導入を決定した。今年6月以降施工される。イギリス議会に農業用(肥料を含む)哺乳動物の肉及び骨粉を使用することを決める法案が提出された。
一方、WHOはBSEに関する専門家会議による提言を行なっている。伝達性海綿状脳症(TSE)の症状を呈している動物の部分を食物連鎖から排除するために、TSEに感染した動物の屠畜処理をすべての国が確実に実施することを提言した。また、BSEの監視体制、強制的届出制度の確立を提言した。
さらに、BSEの発生国はBSE感染体が含まれる疑いのある特定の組織を食物連鎖から排除しなければならないことも提言し、反制動物の組織を反制動物の飼料として使用することも禁止した。
医薬品については、BSE因子を伝達する危険性を最小限度にする措置が有効であり、医薬品の原料については監視が実施されているBSE未発生国、あるいは散発的発生国のもののみ使用すると提言した。
原因は牛を喰った牛だった!
さて、欧州のこのような事態・措置を受けての、日本の農水省、厚生省の対応は次のとおりである。厚生省は、すべてのイギリス産牛肉加工品などの輸入を自粛するよう業者に要請した。農水省は飼料やぺ。トフードなどの牛肉加工品についても輸入を禁止し、北アイルランド産の牛肉も新たに輸入禁止の対象とした。
ところで、BSEの日本の農業の現場との関連だが、いくつかを挙げることができる。まず、日本でのBSEによる牛の死亡例はないとしても、羊のスクレイピーによる死亡例は報告されていることは見逃せない。これまでに100頭以上の羊がスクレイピーによって死亡しているのである。したがって、日本国内でBSEが発生しないという保証はどこにもないのである。
BSEの要因についてはいろいろ言われている。現在、BSEの原因としてイギリスをはじめとする多くの国の学者によって学説として有力視されているのは、プリオンと呼ばれる細胞のタンパク質の変化である。プリオン自体はウイルスでも細菌でもなく、動物自身の遺伝子によって作られ、神経の伝達にかかわっていると考えられている物質である。そのプリオンの異常を起こしたものが脳神経を破壊し、それがスクレイピー、BSE、TSEと呼ばれる病気(プリオン病と総称される)となると考えられているのである。
ここで厄介なのは、プリオンが食べるだけで脳へ到達するとみられる点と、さらに異種間でも感染するという点だ。したがって、今回のBSEがもしプリオンの変化だとするならば、これが日本の畜産の現場でも発生し、人間にも感染しないという保証はない。牛肉を食べると、 人に対する感染、死亡が起こっても不思議ではないということなのである。
一方、日本の牛肉流通業界、あるいは末端の消費者の段階ではどういうことが起きているかというと、一つには15~20%の大幅な売上ダウンが挙げられる。つまり、BSEの発生によって消費者が国産・輸入牛肉を含め、当初は買い控えをしたのである。いま、BSE発生から数力月たって、国産牛肉の売上げが若干上向きで、一方輸入牛肉に対する消費者の見方にはあい変わらず厳しいものがある。それが長く続くかどうかは、今後のマスコミのBSEに対する報道のしかたにも左右されるだろうが、予測はしがたい。
しかしわれわれが考えるべき最も重要な問題は、BSEを日本で発生させないための手立てを講じなければならないということである。それにはまず、羊、牛、鳥などのミートホーンミール、つまり動物性の飼料を牛に与えないことである。欧米ではすでにミートホーンミールは半ば常識化していて、飼料の生産コスト、あるいは飼料の栄養バランスをとるために使用されている。日本も配合飼料主体の畜産が盛んだが、今後はミートホーンミール等の使用をしないという行政指導なり、業界の自発的な方向づけが必要となる。
対BSEならずとも、このことについてはよく考えられるべきである。食肉処理場筋からの情報によると、近年、つまり配合飼料主体の牛肉の生産が行なわれるようになって以来、牛の健康状態が極めて悪化しているということである。たとえば東京芝浦市場で牛1頭を屠畜すると、牛の場合内臓廃棄は70%になる。つまり、肝臓、心臓及び腎臓が検査にパスしない。このことほとりもなおさず、それだけ不健康な牛が生産者から屠畜場に送り込まれているということである。
牛の健康を取り戻すには、牛本来の持っている機能、草食性動物であるということをもっと重要視しなくてはならない。牛には4つの胃がある。第一胃がいちばん大きく、他に第二胃から第四胃までがあるが、これらは一旦第一胃にため込んだ草を反物するという特殊な機能を持った消化機関である。牛は元来、そうした胃の機能によって草からあの大きな体の構造を作ることができる動物なのである。これはまさに、人間の知恵では考えられない牛の世界の生理構造である。
ところが、最近牛に与えられている飼料は、そうした牛本来の生理に反して穀物が主体となっており、ミートホーンミールという動物の組織さえ与えられ、逆に盤早はあまり重要視されていない形態になっている。このことはイギリスでもアメリカでもオーストラリアでも、そして日本でも同じような傾向である。
そして結果的に、そのことがBSEをひき起こし、イギリスの4000万頭のように、非常に大きな頭数の処分にまで発展してしまったのである。
重要なことは、畜産界がBSEを真剣にとらえ、このような病気が起こらないような飼育体系を早く確立することである。そして、健康な牛肉を消費者が安心して食べることのできる状態を一日も早く実現しなければならない。
一方、日本の牛肉流通業界、あるいは末端の消費者の段階ではどういうことが起きているかというと、一つには15~20%の大幅な売上ダウンが挙げられる。つまり、BSEの発生によって消費者が国産・輸入牛肉を含め、当初は買い控えをしたのである。いま、BSE発生から数力月たって、国産牛肉の売上げが若干上向きで、一方輸入牛肉に対する消費者の見方にはあい変わらず厳しいものがある。それが長く続くかどうかは、今後のマスコミのBSEに対する報道のしかたにも左右されるだろうが、予測はしがたい。
しかしわれわれが考えるべき最も重要な問題は、BSEを日本で発生させないための手立てを講じなければならないということである。それにはまず、羊、牛、鳥などのミートホーンミール、つまり動物性の飼料を牛に与えないことである。欧米ではすでにミートホーンミールは半ば常識化していて、飼料の生産コスト、あるいは飼料の栄養バランスをとるために使用されている。日本も配合飼料主体の畜産が盛んだが、今後はミートホーンミール等の使用をしないという行政指導なり、業界の自発的な方向づけが必要となる。
対BSEならずとも、このことについてはよく考えられるべきである。食肉処理場筋からの情報によると、近年、つまり配合飼料主体の牛肉の生産が行なわれるようになって以来、牛の健康状態が極めて悪化しているということである。たとえば東京芝浦市場で牛1頭を屠畜すると、牛の場合内臓廃棄は70%になる。つまり、肝臓、心臓及び腎臓が検査にパスしない。このことほとりもなおさず、それだけ不健康な牛が生産者から屠畜場に送り込まれているということである。
牛の健康を取り戻すには、牛本来の持っている機能、草食性動物であるということをもっと重要視しなくてはならない。牛には4つの胃がある。第一胃がいちばん大きく、他に第二胃から第四胃までがあるが、これらは一旦第一胃にため込んだ草を反物するという特殊な機能を持った消化機関である。牛は元来、そうした胃の機能によって草からあの大きな体の構造を作ることができる動物なのである。これはまさに、人間の知恵では考えられない牛の世界の生理構造である。
ところが、最近牛に与えられている飼料は、そうした牛本来の生理に反して穀物が主体となっており、ミートホーンミールという動物の組織さえ与えられ、逆に盤早はあまり重要視されていない形態になっている。このことはイギリスでもアメリカでもオーストラリアでも、そして日本でも同じような傾向である。
そして結果的に、そのことがBSEをひき起こし、イギリスの4000万頭のように、非常に大きな頭数の処分にまで発展してしまったのである。
重要なことは、畜産界がBSEを真剣にとらえ、このような病気が起こらないような飼育体系を早く確立することである。そして、健康な牛肉を消費者が安心して食べることのできる状態を一日も早く実現しなければならない。
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