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読み切り

農協金融9月危機説は本当か!'96年・日本大冷害のシナリオ・狂牛病は対岸の火事か!?

 しかし、イギリスはこのような欧州委員会の決定に対して非常な反発を示している。3月27日にEUで決定されたイギリス産牛肉、牛関連商品の輸出禁止措置の早急な解除を要求している。しかしEUはこれに同意せず、結論は6週間ごとに開催されるEU常設の獣医委員会の検討に委ねられることになっている。

 というのも、BSEは実はイギリスだけではなくフランスをはじめ他のヨーロッパ各国でも発生しているのである。その発生頭数は、いちばん多いイギリスが 14万4792頭、アイルランド99頭、フランス11頭、スイス118頭、ポルトガル33頭、カナダー頭、ドイツ4頭、イタリア2頭などとなっている。このように、頭数に違いこそあれ、BSEはヨーロッパのほとんどの国で発生しており、また日本への牛肉輸出が認められているカナダにおいても発生が報告されているのである(表2)。 

 イギリスはBSEに対し、メージャー首相以下非常に真剣に取り組んでいる。たとえば、EUの決定した輸出禁止措置は不当であるとして、4月16日欧州裁判所へ提訴することを決めた。ホッグ農業大臣は、BSEの追加措置として96年総額9億3000万ポンドを出資し、97年以降は毎年5億5000万ポンドを出資するというように、経済対策を打ち出している。97年以降の毎年5億5000万ポンドの中身は、30ヵ月齢以上の牛の処分に割り当てられる。

 また8000万ポンドを限度として、30ヵ月齢以上の高級牛の処分に対しては、1億1000万ポンドを支出する。1億1800万ポンドを精肉工場に支出する。また、生産者段階では、家畜登録制度の導入を決定した。今年6月以降施工される。イギリス議会に農業用(肥料を含む)哺乳動物の肉及び骨粉を使用することを決める法案が提出された。

 一方、WHOはBSEに関する専門家会議による提言を行なっている。伝達性海綿状脳症(TSE)の症状を呈している動物の部分を食物連鎖から排除するために、TSEに感染した動物の屠畜処理をすべての国が確実に実施することを提言した。また、BSEの監視体制、強制的届出制度の確立を提言した。

 さらに、BSEの発生国はBSE感染体が含まれる疑いのある特定の組織を食物連鎖から排除しなければならないことも提言し、反制動物の組織を反制動物の飼料として使用することも禁止した。

 医薬品については、BSE因子を伝達する危険性を最小限度にする措置が有効であり、医薬品の原料については監視が実施されているBSE未発生国、あるいは散発的発生国のもののみ使用すると提言した。


原因は牛を喰った牛だった!

 さて、欧州のこのような事態・措置を受けての、日本の農水省、厚生省の対応は次のとおりである。厚生省は、すべてのイギリス産牛肉加工品などの輸入を自粛するよう業者に要請した。農水省は飼料やぺ。トフードなどの牛肉加工品についても輸入を禁止し、北アイルランド産の牛肉も新たに輸入禁止の対象とした。

 ところで、BSEの日本の農業の現場との関連だが、いくつかを挙げることができる。まず、日本でのBSEによる牛の死亡例はないとしても、羊のスクレイピーによる死亡例は報告されていることは見逃せない。これまでに100頭以上の羊がスクレイピーによって死亡しているのである。したがって、日本国内でBSEが発生しないという保証はどこにもないのである。

 BSEの要因についてはいろいろ言われている。現在、BSEの原因としてイギリスをはじめとする多くの国の学者によって学説として有力視されているのは、プリオンと呼ばれる細胞のタンパク質の変化である。プリオン自体はウイルスでも細菌でもなく、動物自身の遺伝子によって作られ、神経の伝達にかかわっていると考えられている物質である。そのプリオンの異常を起こしたものが脳神経を破壊し、それがスクレイピー、BSE、TSEと呼ばれる病気(プリオン病と総称される)となると考えられているのである。

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