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読み切り

農協金融9月危機説は本当か!'96年・日本大冷害のシナリオ・狂牛病は対岸の火事か!?

 ここで厄介なのは、プリオンが食べるだけで脳へ到達するとみられる点と、さらに異種間でも感染するという点だ。したがって、今回のBSEがもしプリオンの変化だとするならば、これが日本の畜産の現場でも発生し、人間にも感染しないという保証はない。牛肉を食べると、 人に対する感染、死亡が起こっても不思議ではないということなのである。

 一方、日本の牛肉流通業界、あるいは末端の消費者の段階ではどういうことが起きているかというと、一つには15~20%の大幅な売上ダウンが挙げられる。つまり、BSEの発生によって消費者が国産・輸入牛肉を含め、当初は買い控えをしたのである。いま、BSE発生から数力月たって、国産牛肉の売上げが若干上向きで、一方輸入牛肉に対する消費者の見方にはあい変わらず厳しいものがある。それが長く続くかどうかは、今後のマスコミのBSEに対する報道のしかたにも左右されるだろうが、予測はしがたい。

 しかしわれわれが考えるべき最も重要な問題は、BSEを日本で発生させないための手立てを講じなければならないということである。それにはまず、羊、牛、鳥などのミートホーンミール、つまり動物性の飼料を牛に与えないことである。欧米ではすでにミートホーンミールは半ば常識化していて、飼料の生産コスト、あるいは飼料の栄養バランスをとるために使用されている。日本も配合飼料主体の畜産が盛んだが、今後はミートホーンミール等の使用をしないという行政指導なり、業界の自発的な方向づけが必要となる。

 対BSEならずとも、このことについてはよく考えられるべきである。食肉処理場筋からの情報によると、近年、つまり配合飼料主体の牛肉の生産が行なわれるようになって以来、牛の健康状態が極めて悪化しているということである。たとえば東京芝浦市場で牛1頭を屠畜すると、牛の場合内臓廃棄は70%になる。つまり、肝臓、心臓及び腎臓が検査にパスしない。このことほとりもなおさず、それだけ不健康な牛が生産者から屠畜場に送り込まれているということである。

 牛の健康を取り戻すには、牛本来の持っている機能、草食性動物であるということをもっと重要視しなくてはならない。牛には4つの胃がある。第一胃がいちばん大きく、他に第二胃から第四胃までがあるが、これらは一旦第一胃にため込んだ草を反物するという特殊な機能を持った消化機関である。牛は元来、そうした胃の機能によって草からあの大きな体の構造を作ることができる動物なのである。これはまさに、人間の知恵では考えられない牛の世界の生理構造である。

 ところが、最近牛に与えられている飼料は、そうした牛本来の生理に反して穀物が主体となっており、ミートホーンミールという動物の組織さえ与えられ、逆に盤早はあまり重要視されていない形態になっている。このことはイギリスでもアメリカでもオーストラリアでも、そして日本でも同じような傾向である。

 そして結果的に、そのことがBSEをひき起こし、イギリスの4000万頭のように、非常に大きな頭数の処分にまで発展してしまったのである。

 重要なことは、畜産界がBSEを真剣にとらえ、このような病気が起こらないような飼育体系を早く確立することである。そして、健康な牛肉を消費者が安心して食べることのできる状態を一日も早く実現しなければならない。

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