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小川幸夫の虫の世界から見る農業

スズメバチも害虫の天敵


また、スズメバチのなかで攻撃的なタイプはオオスズメバチとキイロスズメバチくらいなもので、他のスズメバチはおとなしい。スズメバチを刺激してしまうような場所に巣が作られてしまわない限り、駆除する必要はない。筆者は10月ごろからスズメバチの駆除をよく依頼されるが、まずは駆除を勧めない。特に軒下で高い位置に巣を作るキイロスズメバチなどはわざわざ刺しに下りてこないため、放っておけばいい。巣の位置を聞き、駆除依頼者が毎日通路にしなければならない場所に巣が作られてしまったときだけは巣ごと捕獲する。どのスズメバチも、11月すぎごろから寒さで翌年の女王蜂候補以外は自然と死に絶えてしまう。
ちなみに、スズメバチを捕獲するためにペットボトルに焼酎とジュースを入れて捕まえたりする人がいる。ホームセンターにも捕獲のための資材が売っているが、まったく意味がない。反対に、その匂いで誘引してしまい、無駄にスズメバチを集めることになる。

養蜂にとっては害虫

筆者の畑によくやってくるのはオオスズメバチとキイロスズメバチだ。これは、飼っているミツバチをスズメバチたちが効率的に襲えることによる。オオスズメバチは、ミツバチの成虫を全滅させてから、巣箱の中にいる幼虫を自分たちの巣へ持ち帰り、また蜜などすべてを食べ尽くす。一方、キイロスズメバチは巣箱の外で帰ってくるミツバチを待ち伏せして1匹ずつ拉致していく。つまり、養蜂にとってスズメバチは害虫になる。
しかし、テレビなどで見たことがあると思うが、ミツバチたちも負けていない。日本ミツバチは襲ってくるオオスズメバチにしがみつき、団子状態になって自分たちの熱を利用して熱殺する。西洋ミツバチも、オオスズメバチは殺せないものの、小型のスズメバチは皆でしがみついて殺すことがある。また、西洋ミツバチの場合、養蜂家が巣箱の入口に鉄製の防護金網を張ることで守ることができる。

スズメバチは農業の財産、
無駄に駆除する必要はない

都市近郊では特にオオスズメバチが駆除対象として真っ先に殺されてしまう。その影響で実はオオスズメバチを天敵とする他のスズメバチたちが繁殖している。つまり、人間が良かれと思ってオオスズメバチを駆除すると他のスズメバチたちが繁殖し、結果的に全体のスズメバチの数が増えてしまうのだ。都市近郊でスズメバチが減らない理由はこうしたオオスズメバチの減少にあると考えられる。

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